オリンピックの種目に入ったことで、

クライミングは競技スポーツとしての側面がクローズアップされ、

競技選手を目指す子どもたちが増えてきました。

 

私もかつては競技に真剣に取り組んでいましたし、

日本代表にはなれませんでしたが、

「ジャパンカップ」などの国内大会で決勝進出の常連ではありました。

当時、「競技は勉強」と捉えて参加し、

そこから多くの学びも得ることが出来ました。

 

なので、少し大きくなった子どもたちにも、

言い訳のきかない厳しさや、肚を決めることの大切さ、

しっかりと準備することの重要性、

さらには”心と身体の関連深さ”や”呼吸”の重要性などといった、

競技の場だからこそ意識しやすい「学び」を得て、

自分の進歩成長への実感につなげるために、

年に一度は競技参加を呼び掛けています。

 

ただし、そこには順序があります。

先ずは人間力を育み、その上で競技力を上げていく、ということです。

この順序を間違えてはいけない。

 

では「人間力」とは何でしょうか?

一言でいえば「調和力」だと言われます。

他者と「調和」するためには、

「自分さえ良ければ」という我欲を捨てて自分を厳しく律し、

他者に寄り添う姿勢が必要です。

 

クライミング…特にアウトドアにおける

仲間との主体的なクライミング活動は、

こうした心の在り方を育む格好の場となります。

 

クライミングは危険を伴いますから、「自分さえ良ければ」は通らない。

そして他者を思いやり、寄り添う心がないと、

ビレイなどの技術が正しく使えず安全性が守れない。

そういう状態では楽しく活動できないうえに、危険です。

 

かつては、子どもたちの群れの遊びの中で、

自然と育まれていたことだと思いますが、

現代に生きる子どもたちは、そうした活動経験の場から

かなり乖離した環境にあると観られるだけに、意識的に取り入れて、

先ずはしっかりした人間としての土台を築いてあげることが重要と思います。

 

競技力や学力はその上に乗って行くもので、

土台のない所にいきなり乗せると崩れてしまいます。

 

先ずは、こうした活動が自分たちで出来るようになることを目指して、

インドアでのレッスンの場で腕を磨き、

一緒にレッスンをする仲間と訓練を重ね、

アウトドアで実践して行くことが出来ると良いな、と思って指導しています。