道を進む、ある旅人がいました。

その旅人を眺めていた太陽と北風が、戯れに

「あの旅人が着ているコートをどちらが脱がせる事ができるか競争しようよ」

「いいよ。そんなの簡単さ」

すると北風さんは

「あんなコート一枚くらい、すぐに吹き飛ばしてやる!」

と旅人めがけて強風を吹き付けました。

すると突然の強風に驚いた旅人は、コートを飛ばされまいと、きつくコートを寄せて飛ばされないように着込みました。

「なかなか、飛ばないな。よし、もっと強い風を吹き付けてやる!」


しかし、強い風を吹き付ければ吹き付けるほど、旅人は固くコートを手繰り寄せ、飛ばされないように風に向かっていきます。


すると太陽は

「あはは、なかなかコートを脱がないね。じゃあ今度は僕の番だ」

太陽はサンサンと日光を旅人の周囲に照らしました。

すると先程まで強風が吹き荒れていたのが嘘のように晴れて、気温はどんどん上がっていきました。

「こんな陽気に暑くなってきたんじゃ、汗をかいてたまらない。コートは着ていられないや」

とコートを脱いでしまいました。




北風と太陽です。

北風はコートを吹き飛ばしてやろうと、旅人の事を考えずに直接、コートを対象としてアプローチをしています。

一方、太陽はコートを脱がすために、コートを着ている旅人にアプローチして自ら脱ぐように仕向けています。

もしかしたら北風もコートを吹き飛ばせたかもしれません。
しかし、仮に吹き飛ばしたにしても、おそらく旅人は飛んで行ったコートを拾って、また固く着込んだ事でしょう。

一方太陽の場合は暑いから、もう一度着込むなんて考えられません。




これぞ目的を果たすためのアプローチです。

直接アプローチするのは簡単です。
表面の問題に対して表面の解決策を提示することは行わなければなりませんが、それだけに終わってしまっても、根本が解決していません。

またすぐに元に戻る事でしょう。

現在起きている事象の根源は何か?
これを探り、解決策のアプローチを講じていくことが、本当の解決となります。



先ほどの北風と太陽でも然り。

人間に起こる問題の大半は人間の心理に帰することがほとんどです。
大半というより全てと言っても過言ではないかもしれません。

解決の第一歩は表面を認識する事ではなく、個人によって異なる深層心理をまずは把握すること。

そこからアプローチが始まるのです。






相手を知るという事は己を知るという事。
己を知るという事は、相手を知るという事。


相手を知るという事は「聞く」ということ
相手の心を話してもらって「聞く」ということ

話してから聞くのではなく、聞いてから話す





相手は話していくうちに、こちらが話をしなくても、自らの内なる声に自然と教えられたりするものです。

そうなれば事は成った様なもの




敵を知り己を知れば百戦して危うからず