「逆縁」





親より子が先立つということですが……
親は子供が息をひきとるその瞬間まで
子供が先に逝くということを考えたくない。

もしそうなったとしたら……
想像を絶する苦しみが
襲いかかって来ると存じます…😭 


更に、急死ということになれば……
子供のために何も出来なかった
自身の情けなさや虚しい思いを抱き 
責め続ける方もいらっしゃいます。





多くの方々の死と向き合い
ご遺族の皆様と対話を
続けてまいりました。

人の数だけ思いがあり
ご家族の状況は違います。
様々な思いが胸をよぎっては
消えることなく
今も胸に残っています…。




この度、私どもよりも若く

43歳という若さで往生されたH様の

ご葬儀が執り行われました。


故人はコロナ禍の中で、

お仕事で海外と日本を行き来され

現地でお亡くなりになられました。






戦後、大住職(佐々木宏忍)が
焼け野原となった境内に立ち、
本堂復興に奔走しました。
また戦災で焼け出された方々に
寺の敷地を提供しました。

H様のご家族とはそれ以来の
お付き合いと聞いておりますので
かれこれ70年以上の
お付き合いでしょうか。






代替わりして
3年の月日が流れました…。

夫の住職に世代が変わってからも
お付き合いさせていただき
ご家族の皆様の悲しみの深さには
耐え難いものがあります😢

寺所内に住まわれるご両親は
不安なご様子でご葬儀までに
何回もご相談に来寺されました。

海外からのご遺体の搬送は
私どもも初の経験ですので
大変戸惑いました😓

これから先のこと、
多くの不安点に対して調べて
最適だと思われる
ご返答をお伝えいたしました。


息子さんを亡くされた
悲しみの真っ最中でも色々な事を
決めなければならないという
身を引き裂かれるかのような
慟哭の中でも気丈に
振る舞っていらっしゃいました…

戸惑いと癒えぬ思いを抱かれ
憔悴されているご様子は
とても胸が痛みました……😢

私どもにできることと言えば…
その辛いお気持ちに
少しでも寄り添い
お話に静かに耳を傾けるくらい
しかできません。

少しでもお御法をお届けすることにより
阿弥陀様の誓われた願いが
届きますことを願ってやみません。



  浄土真宗の死生観


浄土真宗において、この世とのご縁が
なくなる(お亡くなりになる)と
すぐに往生され、お浄土にいかれます。

肉体の苦痛から解き放たれ、
安らかになられ
H様は今度は衆生で苦しむ
私どもを救うべき存在として
いつも見守ってくださるので
安心されていいのですが…

残されたご遺族の悲しみや喪失感、
どうしたらいいかわからない苦しい
お気持ちはすぐに癒えることは
ないと思います。

しばし時を待たなければなりません。

今回のように手塩にかけて
慈しみ育んできた 
愛する息子さんであればこそ
親としてやるせない気持ちが
こみ上げてくるのは当然です。







色々な諸事情があることと存じますが、
昨今、一日葬が急増しております。


お通夜において、故人を偲び
生前関わりが深かった人々と 
別れを共有することにより
辛いお気持ちを吐露することは
大切なことです。



つまり、嘆き悲しむということは…

死を受容する上での

大切なプロセスなのです。





そして、ご葬儀は往生を遂げた

故人の死を悼みつつ

遺された側がその死を

しっかりと受容し

故人の死を認識すること

その存在の喪失を感じること

が大切なことです。






そして、一つずつステップを踏みながら

先に往生された方をご縁として


いま生かされている

自身の命の意義に立ち返り

精一杯生きぬくこと


こそ大切であると説きます







これから四十九日、納骨と進むにつれ
一周忌を迎える頃には少しずつ
落ち着かれるかもしれませんが
死に目に会えなかったことに対する
後悔の念が更に苦しめることもあります。

 


しかし、執着しているのは 

故人ではなく

全て生きている者の
心が起こすもの

だということに

気づくことこそ大切なことです。



今回のように海外で死に目にあえず
時間が経ち急死の知らせを
聞いた場合には、
なかなかそれを認めることが
出来難いかもしれません。
すぐに乗り越えろと  
いわれても難しいことかと存じます。




住職もお通夜、ご葬儀が
かなり辛かったと
申しておりました。

お役目の上で住職は今までに
ご葬儀は幾度も経験してきた
こととはいえ、古くからの
知り合いということになると
人間としての感情が
動くのを止められないのは
当たり前なのかもしれません。

阿弥陀さまの「同悲同感」のお心を
私たちも与えられた生の中で
懸命に歩みいただいていく
ことが大切です。

日々、人間の限界を切に感じながら
ひたすら阿弥陀さまに
おまかせするしかないことを
実感しております…🙏

少しでも皆様の心が和らぐことを
念じおります。

合 掌



そんな辛い心模様のとき、
思い出して開く一冊を次回は
ご紹介したいと思います。

続く………………