:これ根が深いということが、今ちょっと分かってきました。 

民間企業でも、ときどきありますよね。

カラ出張とかやって、小金を作りました、そんなことがバレてですね、

問題になったり処分を受けたり、社内処分で済む場合もあるし、

横領扱いされると、これ純然たる横領だと思うんですよ。

まして公金です。

仙波:でしょ? 何重も罪を重ねてる。

 

  :警察のお金つまり公金、税金を、

私腹を肥やすために少しずつ、お金を入れてた。

で、飲み食いに使った・・ちょっと、いじましいですね?

「犯罪それはけしからん。国民の税を何と思ってる」という、

怒りのレベルで済む話じゃなくて、

実はそれが警察全体の、人事にも深く関わるということは、

質の悪い、こういうことは当たり前だと思う人ほど、

出世してしまうわけですね?

仙波:もちろんですよ。だから捜査力が減ったんです。

捜査能力が減ったんですよ。

 

  :捜査能力が減った? 

仙波:当然です。警察全体の力を落としてしまった。

  :捜査力っていうのが、仙波さんが入られた頃の検挙率に比べて・・

仙波:(警察に入った)当時60%です

  :60パー。

当時、犯罪の発生件数に対して、6割は犯人を捕まえることができた・・

仙波:それも下駄をはかせてますけどね。

  :下駄をはかせる? 下駄という意味が・・?

仙波:こう、下駄はこう上に上がってるでしょ?

  :水増し? あ、そういうことですか・・ほお・・

仙波:ですから、天ぷらともいうんですよね。

  :天ぷら・・これも警察用語、隠語ですか?

仙波:はい。

  :天ぷらというのは・・どういう意味?

仙波:天ぷらを揚げると。

  :あ、天ぷらをあげる、

だから要するに水増しをすることを、揚げるという・・

これどうやって水増しするんです?

仙波:いや簡単でしょ。犯罪発生件数を消せばいい。

  :消せばいい?

仙波:分母を少なくすればいい。

 

  :ということは届け出があったものを、届け出しないとか?

仙波:認知数を、減らしてしまう。

昔はね、犯罪発生件数って、僕が入ったころは言ってました。

ところが何年か経ってですね、

発生件数を減らす行為が、おかしいんじゃないかという風な、

言葉の上で、ですよ。

  :じゃあ、警察が認知しなければいいと?

仙波:だから今は「犯罪認知数」なんですよ。

犯罪が起きてもね、警察がそれを犯罪と認めなければ、

犯罪じゃない、というわけです。

  :うんうん、 なるほどね。話のすり替えですね。

だから認知件数って、確かに言うようになって。

 

仙波:それもね、私が昭48年に24歳で巡査部長になりましたが、

その時に、署長に初めてニセ領収書を書けと言われた時にね。

  :24歳に巡査部長になって初めて言われました?

最初の、巡査の頃は言われない?

仙波:言わない。

大きな署にいたということもありますけど、

やはりその当時はですね、

この警官が将来ずっとやっていくかどうか、見通しを立てるわけです。

早く辞めるもんにはニセ領収書を書かさない。

  :外でしゃべっちゃいますからね・・

そうすると1年、2年、何年ぐらい?

仙波:僕は18から入ったから、5年目で試験通りましたけど。

24歳でしょう、その時に「書け」と。 

私は既に知ってましたから、そのカラクリを。

だから書かなかった。

その時に、署長室に呼ばれて叱られましたけど、

私が最初に言った言葉は、

「こんなことを続けていたら、日本の警察はダメになりますよ。

犯罪を取り締まる、法律を守る、それが警察の原点でしょう?

その警察が自ら、お金をね、文書偽造し、税金を詐欺し、

それを私的に使う。業務上横領だ。

そんなことやったらね、

今は60%ですけど検挙率が大変になりますよ」ということを、

署長に言ったんですよ。

そしたら署長が「もういい」と言いました。

それまでもね、「組織の敵」「なぜ君は書かないんだ」と、

署長が叱るわけですよ。

 

「署長、これ犯罪でしょ? 単なる私文書偽造で済まんでしょう?

それから公文書となると、公文書偽造になる。

これ1年以上10年以下(の懲役)ですよ?

それから税金を騙しとる、これ詐欺でしょう?

騙し取ったお金を私的に使う。業務上横領でしょ?

脱税もありますけど、こんなことを組織的にやったら、

警察はダメになりますよ」ということを、僕は言ったんですね。

だから、その前に「署長が警察は金がいる」と。

「組織を運営するには金がいる」というんですよ。

 

  :さっきの公務の話ですよね? 

本当にそういう風に、捜査のためにとか、公務のために金がいるという。

だから予算の融通いうんだったら、まだ意味が分かるけれども、

実はそうじゃない。

警察に、金がいるんじゃなくて、

警察官の身分の人間にとって、私的な金がいるという、

ちょっと違う話ですよね。

金がいるのは、みんな同じなんですよ。

 

仙波:そうですけどね、それで叱られて、

「警察がダメになります」と言ったらですね、

署長が「もういい」と。

  :「もういい、もうやらなくていい」と?

仙波:「今日の話はもういい」と。

ところが異動時期になると、必ず私に書かせようとするわけですね。

部下が、私の上司が。

断ると、転勤ですよ、転勤ですから。

そんなことされたら、みんな負けちゃいますよ。

そういうことで、検挙率の話に戻りますと・・

  :あ、負けちゃうという意味は、あの、気持ちが折れて、

もう言いなりになって、一緒に手を染める、みんなとなじむ、

ということですね? 同じ赤信号を渡っちゃうと?

赤信号を渡ってしまう。

そうすると組織にとっては、そういう人間がいると、

たいへん不都合で、いつか告発されるんじゃないか、

危険人物ですよね?

向こうでみんなと一緒になってしまえば共犯だから、喋らないだろうと。

 

仙波:そういうことです。

  :ですよね? でなければやめてしまうか。

早いうちに辞めて、口つぐんだまま、辞めていく。

どっちかになる、っていうことですね?

 

仙波:ですから 警察では、そういう人間を「マル特」というんです。

  :マル特・・?

仙波:はい。特別の「特」を、丸で囲むんです。 

  :マル暴みたいなもん?

注)マル暴とは暴力団の隠語。暴力の「暴」を丸で囲む。

仙波:そうです。

  :特別な人間を、マル特?

仙波:特別対象者。

  :対象者? 特別な対象者・・

仙波:特別対象者というのは正式な言い方です。

それを隠語で、マル特。だから「仙波はマル特だ」と。

 

  :対象っていうのは、監視の対象・・

気をつけないと、ウォッチングの対象者・・

仙波:そういう意味です。

それは、口頭で引き継ぎを、署長同士がしますから。

履歴書を見ても、書いてないんです。

検挙率もですね、24歳の時に60%あって世界最高でした。

当時アメリカが17、8パーでした。

  :それぐらい ずば抜けた検挙率。

仙波:もちろん、下駄をはかせての60%ですから、

実際は、50%ぐらいだったんでしょう、それでも高いですよ。

それが、私が最初に言われてから、ずっと拒否してますけど、

最初のとき「おかしくなりますよ」と言った時に、

まさかここまで下がるとは思わなかったです。

 

  :今どのぐらいになってんですか?

仙波:最低10%台 まで下がりました。

平成13年で、あの「雪見酒」の時ですよ、新潟の。

    :ああ、ありましたね。 

 

 

 

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