(警察の裏金工作に協力しなかった一警官が、
職場でどのような報復を受けたかについての体験)
「人事異動時期に、大体3月であるとかですね、
8月も異動がありますが、
その時期に結構(ニセ領収書を)書けという指示をされるんです。
で、拒否をします。即、転勤です。
家族がいて、子供が学校行ってる状態で、
転々とされたら、どうしようもないんですよ。音を上げるんです。
だけど私は署長に、
「こんなこと続けていたら今に日本の警察はダメになりますよ」と、
当時、犯罪検挙率は60%、世界最高でした。
『大変なことになります。だから、やめましょう』ということを、
その都度言いました。
『だが、組織を運営するにはカネがいる』と。
『その金がいるのに協力しないのは、君は敵か?』ということで、
誰の上司に言っても、誰1人、取り上げようとしませんし、
マスコミの方も取り上げてくれませんでした」
そういう状態が続いたと・・昇任試験は受け続けたんですか?
「そうですね。
私も、同期生では当然トップだろうと思ってましたから、
ノンキャリの最高ポジション、当然ねらってました。
で、年齢が来て、今度は上の警部補という階級の試験を受けます。
当時15人ぐらい、毎年通ってましたが、
そのうちの、私の知る範囲で12人までは、
昇任試験の問題が全て漏れてます。
私は残りの3人です。
全く問題が入手できない。入手しようともしません。
自分の実力で受けます。
400人ぐらい受けて15人に入ります。自信がありました。
そして本当に絶対通るんだという気持ちで、
学科試験をクリアして面接に行きますと、
面接試験官も言うんですね。
『おお仙波くん、ようできとるな』と。
得意な顔して、所属署に帰るんです。
当時、宇和島署というとこでしたが、
帰ったらですね、副署長が待っとんですね。
『君は通らんよ』と。
私は、その副署長に今、感謝をしてます。
『なぜ通らないんですか』と。
『君は、書いてないだろう?
書いてない者を昇進さすわけにはいかない』」
ああ領収証をですか?
「そうです。偽領収書を書いてない者は、いわゆる踏み絵ですね。
『じゃあ、どうしても通りませんか?』
『いや、通るよ。いま書けばいい。いま書けば来年の試験に君は通る』
と、こう言うんです。
時間的に5秒ぐらいでしたかね、『じゃあ、いいです』と。
『犯罪者が通って、まともな者が通らない試験は私もう受けません』と。
ですから私が現在、35年ですから、36年巡査部長を続けてます。
英語でいうとサージェントという階級ですが、
36年の巡査部長は、たぶん、大内さん、もう記録は破れんですよね」
ありえないでしょうね。
「(笑)これはもう本当に、自分の自慢なんですね。
もう自分のステータスというふうに思ってます。
ですから宮城県の浅野史郎さんといっぺんお会いした時にですね、
私と東君が会ったんですが、浅野史郎さんが言いましたね。
『あ、全国でただ一人、正義の警官仙波さんですね』っていう風に、
彼が言って、握手をしてくれましたが、
もちろん正義の警官はたくさんいます。
でも裏金を拒否をしてですね、昇進試験もできない。
●浅野史郎知事VS宮城県警 - 新聞記者の雑記帳 (goo.ne.jp)
そして1番辛かったのは、やりたい仕事がやれない。
特に、私は大きな事件をやりたかったわけですね。
取調べの技術は、僕は誰にも負けない自信があります。
でも、そういうところには行かしてくれない、
とくに警備公安というところは、もう全く私には声をかけてくれない。
ですから仕事ができない、(仕事を)くれない。
じゃあ何するか・・田舎の駐在所、交番回りです。
そこでよく言われるのは『なぜ、やめなかったんですか』と。
『そんなとこにいても、いかんでしょう』という風に、
よく言われますが、先にお伝えしたいのは、
皆さん、警官という仕事はですね、
僕は日本で最高の職業だと思ってるんです。