ことのは 111 外交は足で稼ぐもの。人と会って話すことから始まる。・・・ | マネジメントの「ことのは」  ==福岡明善の「学びのヒント」==

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こんにちは。

 

“マネジメント人財の目利き&「大人の学び」の案内人”福岡 明善です。

 

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ことのは 111

 

外交は足で稼ぐもの。人と会って話すことから始まる。お互いの共通利益を見いだす試みだから

 

(田中均、朝日新聞、2022年12月20日)

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 田中均さんは、元外務審議官です。

2002年9月の小泉純一郎首相(当時)による歴史的な北朝鮮訪問から20年以上が経過しました。

小泉首相と金正日総書記(ともに当時)とによる日朝首脳会談において秘密交渉を担ったのが田中さんです。

 

 

     外交は相手がいるわけで、忍耐が必要です。

     北朝鮮にも利益があることを示さなければ何も動かない。

     外交とはそういうものです。

 

 

 冒頭にご紹介した田中さんのことのは、

 

 

     外交は足で稼ぐもの。

     人と会って話すことから始まる。

     お互いの共通利益を見いだす試みだから。

 

 

 平易なことばを用いて語っておられますが、非常に普遍性が高いと思います。

 

 「外交」を「〇〇プロジェクト」に置き換えても通ずるところが大きいのではないでしょうか? 

もっと言えば、「仕事」に置き換えてもいいはずです。

 

 「仕事」と言えば、同じ元外交官の佐藤優(現・作家)さんにまつわるお話も印象的です。以下は、

 

“1991年「ゴルバチョフ氏は生きている」 ソ連クーデター、秘密公電は語る 佐藤優氏、重鎮から情報”(朝日新聞デジタル、2022年12月21日)

 

および

“(Another Note)32年前ソ連の「すごい情報」、日本外交にどう生かされた”(朝日新聞デジタル、2023年1月23日)

 

を参照しています。

 

 1991年8月、当時のソ連の首都モスクワで、停滞する社会主義大国で改革を進めていたゴルバチョフ大統領に対するクーデターが起きました。正確には8月19日早朝に保守派が「非常事態国家委員会」を立ち上げて全権掌握を主張し、ゴルバチョフ大統領は「健康上の理由」で職務不能とされました。

 

 モスクワの日本人外交官たちは情報収集に走り出します。当時、モスクワに勤務していた佐藤さんは、「日本大使館の幹部らは政権を担うゴルバチョフ派とつきあっている以上、対立する保守派とはつきあえない。私が大いに食い込むよう枝村純郎大使は指示してくれていた」と言います。

 

 佐藤さんは、ロシア共産党の重鎮、イリイン第2書記と接点を作っていました。ソ連で最大の共和国ロシアの大統領でクーデターを批判したエリツィン氏とは対立関係にあった人物です。ゴルバチョフ大統領の所在を問う佐藤さんに、イリイン氏は「非常事態委よりクリミアの別荘で静養を継続との報告を受けている」との貴重な情報をもたらしました。

 

 結果として、このクーデターは3日間で決着します。非常事態委は8月21日夕に解散し、ゴルバチョフ氏は22日未明に空路クリミアからモスクワに戻り、夕方の記者会見でエリツィン氏と協力してソ連の改革を続ける決意を示しました。しかし、副大統領ら身内から反旗を翻されたゴルバチョフ大統領は求心力を失い、改革は停滞します。バルト3国は独立し、12月にロシアとウクライナ、ベラルーシが「ソ連は終止している」として独立国家共同体の創設を表明すると他国も続き、91年末にソ連は崩壊しました。

 

 佐藤さんは、約1カ月後にイリイン第2書記と会い、なぜ(米国を中心とする)西側外交官の私に情報を教えたのかと尋ねると、次のように言われたそうです。

 

 

     君が日本政府に報告するのはわかっていた。

     でも人間には、危機的状況になると本当のことを伝えたい欲望が出てくる。

     そして人間には、仕事を方便でする人本気でする人の2通りいる。

     前者は共産党にも多い。私は後者に伝えたかった。見渡すと君だった。

 

 

 「仕事を本気でする」とはどういうことだろう、と考えさせられます。

 

 では、また。Bonne journée !

 

追伸)

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