『人生の特等席』
原題は Trouble with the Curve (カーブに足元をすくわれる) 原題の方が深くてよい、人生はしばしば予期せぬ変化球でやられる。メジャーリーグを題材にしたハリウッド映画はチーム名も実在で登場するのが特徴。クリント・イーストウッドは『グラン・トリノ』などで見せた頑固な老人像が定着。最後の急展開がどうなのか?という気もするが、ハイテク化されるメジャーのスカウト事情、親娘の関係性を描いて、全体的によく出来ていた。

『新幹線大爆破』
1975年作品、オールスターパニック映画全盛のハリウッドに対抗して(見習って?)製作したのだろうが、当時の国鉄の協力を得られなかったことを考えると非常によくできている。ただ2時間33分は長く感じた。余計なエピソードは省いて2時間くらいにすればより引き締まったように思う。今の感覚からすれば、になるが。

『七年目の浮気』
ビリー・ワイルダー監督は『失われた週末』や『サンセット大通り』などのシリアスものの方が個人的には好きかも。この映画の見所の1つはラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の使い方。男の妄想、理想の部分を具現化したのが全盛期のモンローが演じた女性なのかもしれない。が、女性の多くとジョー・ディマジオには受け入れられなかったか。
『父親たちの星条旗』
戦後生まれであっても、どこかで見たことはある一枚の写真にこのような逸話が残ってたことは知らなかった。確かに国のヒーローとはこのように生み出されるものなのだろう。内田樹氏によると、クリント・イーストウッドの映画はすべてが少しだけ足りないそうだ。そのせいで、観客は映画の中に自分の責任で言葉を書き加え、感情を補充し、見えないものを見、聞こえない音を聴くように誘われる、と。

『硫黄島からの手紙』
この映画は第1部でもあるアメリカ側から描いた『父親たちの星条旗』よりもかなりの出来映えの良さだと思う。前作で見た場面場面がなるほどここでこう繋がるのかという演出もよい。渡辺謙はさすがの存在感、世間の評価は分からないが二宮和也くんはこの役にはまだ少し早すぎたように感じた。

『スケアクロウ』
スケアクロウとは案山子のこと。アル・パチーノ(上手い!)演じるライオンがジーン・ハックマン(上手い!)演じるマックスに案山子とカラスの関係について語る。「カラスは案山子を怖がってなんかいない、笑ってるのさ。自分を愉快にさせてくれたから、こいつの畑は荒らさずにいようって思ったのさ」ここから二人の友情が深まっていく。いい話です。
『一気にわかる!池上彰の世界情勢2020』池上彰
池上氏は恐らくトランプ大統領をあまりよくは思ってない。他には北朝鮮のICBMについて、そして米中に比べ馴染みの薄い中東・アフリカのことまで例によって分かりやすい解説。もともと毎日小学生新聞に連載されてたものに加筆、編集したものらしいが、むしろ大人が読んで十分に役立つ。世界情勢2020とあるが、この本が出た時点ではまさかコロナがここまで猛威をふるうとは誰も予測できなかった。

『未来への大分岐』 マルクス・ ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソン、斎藤幸平
ほぼ同時並行してNHKの『欲望の時代の哲学2020 マルクス・ガブリエル NY思索ドキュメント』を観てたので興味深く読めた。彼は経済格差、気候変動、難民問題など、より良い解決策を探るためには、相対主義を超えた客観的な事実の重要性に基づく「自明なものの政治」つまりエビデンスに価値を置く政治を求めるべきと。そのためにはポール・メイソンの支持するグリーンニューディール法案にも注目せねばなるまいが、両氏にはこのご時世、どうしてもコロナ禍についての見解を聞きたくなる。

『「家族の幸せ」の経済学』山口慎太郎
結婚の経済学、赤ちゃんの経済学、育休の経済学、イクメンの経済学、保育園の経済学、離婚の経済学を著者がそれぞれ科学的根拠に基づき解き明かす。様々な興味深いデータが紹介されるが、これとてやはりコロナ後の世界は何らかの変容を迫ってくるのではないかと思わされる。