【右足がつって力尽きた田村投手の夏】
当地千葉県の高校野球は、終盤を迎えベスト16校が出揃った。私はこのエッセイを月・水・金に毎週更新しているが、一昨日は観戦疲れでとうとう数年ぶりに穴を空けてしまった。
今年の選手権千葉大会で、私が一番注目していたのが、Bシード・県立長生高校のエース田村健太投手。185センチの長身から左投げで大きなカーブを投げ込んでくる。ストレートの球速は120キロ程度。プロのスカウトは目にも止めない投手に違いない。
彼のBシードとしての最後の夏はこうだった。
【選手権千葉大会2回戦】
長 生 000 000 010=1
市松戸 000 000 05×=5
いつもの通り田村投手が先発。この日もコントロールが冴えて、6回裏まで市立松戸打線を完封する。しかしベンチに戻ると右足がつった。ここまで104球。しかし痛みに堪えながら出場を続ける。
8回表には田村君が中前安打で出て、後続も安打して彼が本塁を踏む。いままでの田村投手ならこれが決勝点になるように思えた。しかし右足の痛さは続き、2度タイムを取っても踏ん張りがきかなかった。8回裏に5四球や安打などで4失点してしまい、2アウトで力尽き降板した。この日の投球数は162球で被安打7だった。
【春季県大会で熱投4試合・650球】
私は、春季千葉県大会の1回戦で、あずさ第一高校を相手に延長10回タイブレークで10-9で勝利した試合を袖ヶ浦球場で目撃するまでは彼のことを全く知らなかった。
この試合は田村投手が完投勝ちして何と229球。2回戦の西武台千葉戦では延長10回6-5で勝利し152球の完投勝ち。3回戦の東海大浦安戦では2-1サヨナラで完投勝利し161球。準々決勝では千葉英和を相手に、さすがに疲れで大量失点して5回裏に降板する。この試合では108球。「準々決勝は疲れてヘロヘロでした(笑)」とは田村投手の弁。
春季県大会予選でも完投勝利していて、春季県大会では4試合で36回・650球を投げ抜いて59年振りの母校を8強に導いた。大会ルールでは「1人の投手が投球できる総数は、1週間に500球以内とする」とあるが、このルールを越えなかったのか、何度も電卓を弾いたものである。
「熱投4試合・36回・650球でとうとう力尽きるー長生高校・田村投手」
「ボールを微妙に変化させてバットの真芯から微妙に外れた部分で打ってもらう」のが彼の投球術で、フライアウトが実に多い。大学でも野球を続けるのだろうか。彼のあの大きなカーブをまた見たいものである。