リー・コニッツの1957年のアルバム。リー・コニッツは50年代初頭より師匠であるレニー・トリスターノとともにクール・ジャズを追求し、ギルエバンスやジェリーマルガンらとも交流を深めている。そのギル・エバンスの紹介でマイルスとも出会い、“Cool Of The Birth”の録音に参加するなど実力を磨くとともに世間からも高く評価されるようになる。
チャーリ・パーカーの高速フレーズを繰り広げるビバップの反動で、トリスターノ派と呼ばれる彼らはレガートなラインを重視したが、それがかえって人間らしい温かみのあるフレーズから遠ざかることになってしまう。コニッツはそんなトリスターノ派からは次第に遠ざかり、ビバップでもトリスターノ派でもない独自のジャズを追求することになるのである。
スタイル的にはクールジャズの流れに沿ったものであるが、そこに彼固有の歌心の篭ったソロを投入することにより温かく、落ち着いた彼独自のスタイルを確立している。この“Very Cool”はそんな彼のスタイルが完成されたアルバム。曲はトリスターノの影響を感じさせるものや、チャーリー・パーカーの曲まで取り上げているが、どちらも完全に彼のスタイルに染められており、感情の起伏など表現豊かな彼のアルトの音が印象的である。メンバーはLee Konitz(as),Don Ferrara(tp),Sal Mosca(p),Peter Lnd(b),Shadow Wilson(ds)のクインテットだが、曲によってはドン・フェララが抜けてカルテットとなる。
このアルバムは当時のジャズのLPにしてはいまいちジャケットデザインがパッとしないせいか、それほど知名度の高いアルバムではないが、彼の美意識と当時全盛だったハードバップ一色だったシーンへのささやかな抵抗を感じさせる良盤である。ビリーホリデーの歌唱で有名なバラード“Crazy She Calls Me”のシンプルで美しいソロは彼の残したプレイの中でも一、二を争うほど完成度が高い素晴らしい演奏といえるだろう。