ケリー・パターソンの1973年のアルバム。このアルバムは“Black Jazz Records”からリリースされており、以前にこのBlogでも書いたダグ・カーンらと同じようにフリーソウルのコンピレーションCDに収録され注目を浴び再評価の対象となったアーティスト。だがこのケリー・パターンというアーティストに関して知られている情報は非常に少ない。インディアナ出身で黒人で初めてミス・インディアナに選出され、1971年のミス・アメリカの候補に上がるほどの美貌の持ち主であり、それを機にTV界に進出しこのアルバム“Maiden Voyage”をリリースするに至ったそうだ。彼女としてはこのアルバムの他に2枚アルバムをリリースしたが現在の情報等は一切ない。
このアルバムはタイトル通り、ハービー・ハンコックの“Maiden Voyage(処女航海)”を中心にJazzやR&B風の曲で構成されている。ミニー・リパートンにも通じるキュートながらも気高い黒さを感じさせる彼女の声が、R&B調のサウンドの中にも独特な雰囲気を醸しだしている。特にインスト曲に歌詞をのせて歌った“Maiden Voyage”のカバーは多くのアーティストのカバーの中でも郡を抜く出来映えで、クールかつスタイリスティックに深いブラックネスを感じさせる名演である。
このアルバムをリリースした“Black Jazz Records”のリリースした音楽は、アフロアメリカンとしての自我に目覚めた黒人による黒人のための音楽であり、このアルバムはケリーパターソンの代表作でもあり、同レーベルにとっての代表作でもある。収録時間28分とアルバムと呼ぶにはボリュームが少ないが、ニューソウルやファンクなどブラックミュージックが圧倒的なパワーを持ち出した70年代初頭という時代の空気を感じさせてくれる隠れた名盤といえる。