Brian Wilsonの2004年リリースの“Smile”。ブライアンが37年前のビーチボーイズとして活動していた頃に着手しながらも幻に終わったあの“Smile”が2004年に完成した。
1967年の歴史残る名作“Pet Sounds”リリース後に発売が予定されていたアルバムで、この“Smile”の先行シングルとしてリリースされた“Good Vibration”が全米No.1を獲得し、世界の期待を集めていたアルバムだったが、ブライアンが精神病(パラノイア)にかかり製作が中断、ブライアンはBeach Boysからも離脱し未完成のままリリースされることがなかったアルバム。長い間まさに“God Only Knows”状態で幻の名作として語り継がれてきたアルバムである。
その後、80年代になってブライアンは復活し、コンスタントにアルバムを発表している。そして2000年を過ぎたあたりからこの“Smile”のニューレコーディングに着手。現在のツアーメンバーによる暖かいサポートを得て無事に完成させたのである。
全体の印象としては、このアルバムの実質的な前作である“Pet Sounds”の流れを汲む作品だが、決して懐古主義的に37年前の音の再現をしてるのではなく、確実に今の音になっているのに驚かされる。アメリカンインディアン、フロティアスピリット、アメリカの田園風景などをテーマに作られており、ポシティブなパワーに溢れている。時間をかけて考え抜かれ、細部までこだわりぬいて作られたサウンドではあるが、全体の印象は非常に暖かい。そんな初公開の曲に混じっている名曲“Good Vibration”の輝きはいまでも色褪せてはいない。
このアルバムのアイデア自体はブライアンがあの時代だからこそ思いついたと言えるものであるが、おそらくあの当時、ブライアンが精神病を患いながら完成させていれば、ここまで肯定的な作品にはならなかったはずである。もしあの頃作っていたらという想像はもはやなんの意味も持たない。ブライアンが37年前に思い描いたサウンドは具現化するまでにこれほどの年月を必要とするほど、重く完成度の高いものであったのだろう。
私のような当時のビーチボーイズをリアルタイムで知らない世代に“60年代の音楽”をリアルタイムで聴くことができるという奇跡を与えてくれたアルバムといえる。