まるで在りし日の大阪府と大阪市のいがみ合いを見ているようだ――。党幹部が別の党幹部のTwitterをブロックするなど、内紛が続く維新。その主役は、日本維新の会政調会長の音喜多駿参議院議員と日本維新の会国会議員団政調会長の足立康史衆議院議員だ。ネットで公開された議論(「2022年1月11日(火)日本維新の会 国会議員団第4回政調役員会」)においても、お互いが一歩も引かず、ギスギスしたやりとりが続く。維新関係者はこう解説する。「『なんで政調会長が二人いるんだ?』という疑問が音喜多氏のもとへ殺到したと本人が明かしています。維新の政調は、国会議員の政策責任者である足立氏と維新全体の政策責任者である音喜多氏の2頭体制です。維新の松井代表は、今年の参議院選挙を睨んで、音喜多氏を政調会長に大抜擢。これまでの維新における論功行賞もあって足立氏に一定の配慮をする必要があったことから、国会議員団の政調会長に置きました。ただ、足立氏がこれまで後輩議員として扱っていた音喜多氏が、ポジションとしては足立氏の上になったわけです」国会だけに収まる政策や議論については、足立氏。維新全体や地方行政にも影響がある部分については音喜多氏が担当するという役割分担なのだが、国会で議論されることのほとんどが広範囲にわたるため、二人の政調会長の守備範囲が被ってしまうのだ。

○「大減税ののちに大増税が待っている」と説明すべき
特に、現在、維新内で議論されているのが「増税」についてだ。代表続投が決まった11月27日に松井代表は「国民と約束した公約実現に全力を尽くしたい」として、先の衆院選での維新の公約実現を誓った。維新の公約であるマニフェストを見ると、1番最初に掲げられているのが、<大胆な規制改革による成長政略へ 増税ではなく減税へ>だ。他のページにも<大胆な減税によって経済成長を後押し><成長のための税制を目指し、消費税のみならず所得税・法人税を減税する。「フロー大減税」を断行し、簡素で公平な税制を実現します。>と書かれている。これまでの維新議員の発言を振り返ってみても「増税の前にすることがある」と「特権的な議員報酬を皮切りに、行政のムダや高齢者に偏った補助金を徹底的に見直すことで財源を捻出する」ことを国民に強く訴えてきた。一有権者である筆者が、通常の解釈をすると、維新が政権を握れば、大減税がなされ、減税による成長戦略がはじまると信じてしまう。しかし、足立氏は「維新は減税政党ではない」として、「減税は一時的な景気対策であって、ベーシックインカムの実現で中長期的には増税になる」旨を主張して譲らない。音喜多氏とは別の議員が足立氏の増税議論に異を唱え「ネット減税(一部に増税する部分があっても全体として減税になっている)を訴えないのか」と指摘しても譲らない。ベーシックインカムには莫大な財源が必要であり、そのために、足立氏がこれまで主張してきた「金融資産税」が実現されれば、減税どころか31兆円の増税になってしまう。この金融資産税は、「貯金税」とも呼ばれ、個人の貯金や国債などあらゆる資産に1%の課税をするもの。ちなみに31兆円は、消費税15%相当の税収だ。消費税が25%になる規模の増税なのだ。足立氏はこの金融資産税について「所得税を払いながら、人生をかけて貯めてきた小金(こがね)をいまさら課税する」と“たいへん正直な説明”をしている。足立氏の意見が通るのであれば、大増税がはじまるということになる。なにより、「増税より減税へ」という選挙公約とのあまりの齟齬は、有権者への冒涜であろう。以前に大きな批判を受けたケータイ電話会社の激安プランの広告は、大きい文字で安くなると書き、読めないぐらいの文字で小さく注意書きが書いてあり、よく読むとぜんぜん安くないというようなものがあった。しかし、維新が掲げた選挙公約には、小さな注意書きすらない。これではただの騙しなのではないか。「大減税ののちに大増税が待っている」ときちんと有権者に説明するべきだ。先の維新関係者はこう話す。「足立氏は党綱領に記載がなく、選挙公約(マニュフェスト)にも『検討』としか書かれていない『ベーシックインカム』を絶対にやる前提でしか議論を進めようとしていません。政調会の議論をみるところ、足立氏の意見は維新でも少数派ですが、足立氏は国会議員団の政策責任者という地位にあります。維新の現在の選択肢としては、(1)(足立氏に従って)ベーシックインカム実現に向けて大増税になることを認める(2)(音喜多氏に従って)ベーシックインカムは『検討』しつつネット減税をすることです。参院選を控え、現実には、(2)を選ぶしかないでしょう。今後は、自民党同様に政調会長(足立氏)抜きで政策を決定していく場面が増えていくと思います」
○大阪都構想の“ブーメラン”
冒頭に述べた党幹部が別の党幹部のTwitterをブロックしたという話は、実は、足立氏が音喜多氏のTwitterをブロックしたのだ。二人の政調会長が違う意見を持っていて、毎週行われる議論は膠着状態だ。足立氏による持論の長演説も目立ち、会の終盤には、「自分にもきちんと意見を言わせる場を持たせろ」という異論もでた。大阪府と大阪市で起きた二重行政を大阪維新の会はこう批判した。
<これがいわゆる大阪の「二重行政」。とにかく基本的に大阪府と大阪市で役所間・議会間の仲が悪い。狭い面積の中で、市民の声を聴くこともなく、府と市が協力することもなく、非効率に税金を投資し続けた結果、大阪はとんでもない状況に陥ることになったんじゃ>(大阪維新の会ホームページ)
同じことが維新の政調会で起きている。大阪都構想の議論を通じて、彼らは何を学んだのだろうか。


2022/1/16(日) 6:00配信デイリー新潮編集部

「大阪都構想の議論を通じて、彼らは何を学んだのだろうか」と言うが何も学んでいないことは明確である。減税と言っているが結局増税ですね。結局選挙のため(選挙で当選するため)にいい加減なことを言っていただけですね。「もともと自民党で立ち行かない議員が橋下知事の人気におんぶに抱っこで集まったローカル政党。国会議員は底が抜けた状況で纏まりも政策もない。」という意見があるようだがある意味正しいと思う。もともと自民党内で落ち目になってあまり意見を言わせてもらえなかった(自民党内で出世コースから外れた)落ち目の人が集まってできた政党ですからね。まあ衆議院選挙の前に出てこなかったが参議院選挙の前にこういういい加減な政党である実態が露呈したことはある意味重要である。今年の参議院選挙では正しい民意を反映させる必要がある。