大阪市会議員 福田武洋(ふくだたけひろ) オフィシャルブログ(大阪市旭区)
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2022年10月の公営・準公営決算特別委員会で、水道局が公表したPFI事業「管路更新事業の新たな官民連携プランの方向性」について質疑しましたので、内容についてまとめました。

 

 

約1年前にも水道局は「大阪市水道PFI管路更新事業」というプランがありましたが、事業者が辞退したため撤回した経緯があります。

前回プランを要約すると・・・

・改正水道法に基づく公共施設等運営権制度を活用。

・1800kmの配水管の更新を16年間という期間で行う。

・事業費は3750億円で実施。

というものでした。

 

事業者側からすると、事業期間が16年間という長期に渡り、その間の事業環境の変化については見通しが立たないため、リスクを勘案して辞退したものと考えられます。

 

そして今回、新たなプラン「管路更新事業の新たな官民連携プランの方向性」が示された訳です。



今回のプランは・・・

・大阪市において指定した路線の管路の更新を実施する。

・管路更新のペースは8年間の事業期間でインセンティブ路線も含めて45km。

・その結果、現行ペースは1年あたり平均4km程度であるところ、年9kmにペースアップする。

・配水支管については、水道局が現行の手法により年間約45kmのペースで更新を進めていく。

・事業費は600〜650億円。

 

今回プランは8年間の実施期間のうち、最初の3年間は計画・設計の時間にあてるため、実質4年目からが施工・竣工になります。

なので8年間で45kmですが、実質の施工は5年間なので、平均で年間9kmのペースになり、現行よりは早くなるというのが水道局の見解です。

しかし、あくまで事業期間の8年間で45kmであり、事業期間としての平均は5~6kmです。

仮に最初の3年間の計画・設計にあてる時間を見込んで、前倒しで次の事業実施を進めていったとしたら・・・

水道局のプランを表にまとめました。

 

表を見て分かるのは、

・前回プランでは1800kmの管路更新を16年間で行う。

・現在、水道局が工事発注して行っているペース、すなわち現行体制では1800kmの管路更新に37年かかる。

・今回プランを今後も8年毎に更新していくと、1800kmの管路更新に35.5年かかる。

・仮に、最初の計画・設計期間の3年間を前倒しして発注していくとすると、1800kmの管路更新に33.5年かかる。

 

現行体制で37年。

今回プランで35.5年。もしくは33.5年。

その差はわずか1.5年。もしくは3.5年。

たったこれだけの差であれば、わざわざPFI導入せずとも現行体制を強化してペースを上げることができないのですか?

 

水道局は南海トラフ巨大地震に備えるため、管路更新のペースアップを図る必要性からPFI事業を導入すると説明しています。

しかし、表を見て分かるように現行体制と比べてほぼ同じペースなのです。

しかも、11月にはエネルギー高騰などの影響から事業リスクが増したため、インセンティブ路線をやめると発表しています。

PFIによる更新ペースはさらに遅れるわけです。

 

南海トラフ巨大地震に備えて管路更新のペースアップを図ることが目的のはずです。

そのための手段としてのPFIの活用。

しかし、これではPFIを導入することが目的になっていませんか?

 

これまで大阪市の水道局は、長い歴史の中で優秀で熱意を持った職員さんが大阪市の水道事業を支えてきました。

その経験やノウハウが継承されてきました。

 

しかし、PFIにこだわるあまり、必要不可欠なその経験やノウハウの継承さえも、PFI導入により放棄しようとしているのではないかと危惧してしまいます。

 

水は市民の生活や経済活動を支える重要なライフライン。

市民の生命と生活を守るために欠かせない存在です。

 

南海トラフ地震や上町断層帯地震対策として、管路更新のペースアップを図っていかなければならないことは誰もが共通認識として持っています。

 

水道局がしっかりと公共としての責務を果たし、本当に必要なところには人員を増やす。財源をつぎ込んでいく。

それが、市民の生命と生活を守るためであれば、積極的に進めていくべきであります。

 

そして、その更新をペースアップさせる補完的役割として、民間の技術的能力を活用していくことはできないのか。

そのためのPFIの活用であり、今のやり方は本来の筋から外れていると考えます。