2009年1月2日「それ」はやってきた
日も沈みすっかり暗くなった海沿いの道
街頭の下に佇む影
2009年の幕開け
私はただならぬ緊張感の元
冷えた身体をさすりながら「それ」を待っていた
携帯の時計を覗き込む
既に18時半を回っていた・・・
出迎えの準備は全く整っていない・・・
無意識に「なるようになる」一言つぶやいて私は「それ」を待った
我が家のヘタレ共は
この瞬間から自分たちの身に巻き起こる
数々の試練出来事を知る由もなかった 2009年1月2日・・・
18時25分携帯電話が鳴る「組長」からだ
どちどちしながら我輩は受話器を上げる
組長 「今○○を通り過ぎ△△バス停のところ」
すでに我が家から石を投げれば当たるほど近くに組長達が居る
私のどちどちは既にリミッターを振り切り鼻血が出そうな勢いだ
副長 「道に出ておきます」
緊張した面持ちでそう答えるのがやっとだった
油の入った鍋の火を切り急いで自宅前の道へと出る
外はとっくに日が落ち上着も羽織らずに飛び出した私は
冷えた空気を感じながら街灯の下へ立つ
怪しい人影・・・目の前を過ぎ行く車が怪訝な表情で私を見る
街頭の下にエプロンをしたおっさんが立っていれば誰だって怪しむだろう
見る人が見れば頭から湯気が立ち上って見えたかもしれない
しかしそんなことはお構いなしだ
私の意識はまったく別の方向に向いていた
当然である
組長一家が我が家にやってくるのだ
・・・ ・・・ ・・・
しかし一向に車が停まる気配はない
数分が経過した
歩いてくるのか?そんなはずはない歩いたって3分もあればお釣りがくる
何台も通り過ぎる車
副長 「通り過ぎたな・・・」
徐に組長へ電話をかける
我が家の前などとーーーーーっくに通り過ぎ
明後日の方向へバリバリ走行中・・・
どちらへお泊りですか?そんな言葉が頭を掠める
出かけたあらぬ一言を飲み込みながら
我が家の位置を再度説明した
私は怪しい影を落としながら・・・組長達が来るであろう通りをぼんやり眺める
あの様子では電話を頂いた時点で既に通り過ぎていたのだろう
・・・
ふと私は一家が乗ってくる車すら知らない事に気がついた
エプロン姿の怪しい影は再び携帯電話を握り締めた
副長 「組長、お車はなんでございましょうか?」
組長 「え?車?この車って何?知らん」
副長 「・・・」 私は言葉を失った
こうして
組長一家のご案内役として買って出た我輩達の三日間がはじまろうとしていた
つ づ く