客観的に、素朴な疑問を口に出せば、なぜ、今治市で獣医学部新設なのだろうか。

畜産農家数や家畜頭数が多いのは、北海道、九州沖縄、東北、関東。
全国比率から見て四国は少ない。
(参考:農水省畜産統計調査)

本当に、より高度でより実情に応じた獣医の育成を考えるならば、畜産の課題がより切実で、畜産の盛んな場所を選定する方が良いのではないか。

 

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実際に、日本の獣医学は臨床実務教育が弱く、国際水準に達していないため、知識技能を有した人材や実践資料などを分散せずに、統合して指導するよう尽力している最中だという。


(参考:日本獣医師会「国家戦略特区による獣医学部の新設に係る日本獣医師会の考え方について 」)

その考え方は理解できるし、間違っているとは思えない。

 

 

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また、現存する獣医師が不足しているわけではなかった。

 

獣医師のうち、小動物診療(いわゆる町の動物病院)に就労する人が多く、家畜診療、家畜・公衆衛生分野で不足しがちな傾向があった。


感染症が発生した時、家畜診療獣医師が不足していることが問題となったが、以降は各地で人員確保に努めている。

 

 


(参考:日本農業新聞2017年2月28日付『獣医師不足 深刻 防疫業務 増すばかり 家畜伝染病を警戒』

/朝日新聞2010年6月17日付『公務員獣医師が足りない』

/農水省H21年「公務員分野における適切な獣医療の提供体制の整備を図る上で留意すべき事項について」 その他、地方自治体の取り組み文書など)


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現状を見れば、獣医師の数が足りないのではなく、就労場所に偏重があるということ。

 

獣医学部を新設して人材を増やしたいという主張は当てはまらない。

さらに、国が主導して獣医学部を新設するならば、より必要性のある地域を吟味すべきだったのではないか。

 


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今治市では、獣医学部を新設したいと熱望してきた。

 

一方、既存の獣医学部では、知識や技能の共有をして内容の充実を図る努力をしていたため、新設はそぐわないという考えだった。

 


それでもなお、国が獣医学部の設置を推し進める形となった。

 

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しかも、「広域的に獣医学系大学のないこと」という「空白地域」を、後から規制条件に入れたということも報じられた。

(NHKクローズアップ現代「波紋広がる特区選定」)


そのため、今治以外に京都が採用希望で提案書を用意していたのに、選択地から外れることとなったという。

 

 

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こうなると、先に今治市の要望と、個人的に結びつきのある加計学園が名乗り出たため、国家戦略特区として獣医学部新設という運びになったと見える。

 


真に国民にとって有益な獣医学の在り方は、吟味していないように思えてならない。

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本当に、公益のために必要な獣医学部の新設を進めるのであれば、地域選定は果たしてこれで良いのだろうか。

 

 

全国から適した設置地域を選定し、打診するという手順があって然るべきではないのか。

 


獣医学会の取り組みを無視してまで、国益として獣医学部の新設を推し進めるのであれば、なおのことである。



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たとえばの話だが、もしも獣医学部新設に適した地域を提案するならば、福島県を推薦してもいいのではないか。


現在、復興のために尽力している福島は、家畜衛生についても力を入れている。

東北の畜産数の多さ、規模や土地の広さに対して、獣医学系大学は岩手と青森のみ。


東北での新設置となれば、家畜数が多く畜産も盛んなため、家畜診療や公衆衛生分野の実践を行うに適し、必要性も高いだろう。

 


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だが、今回の新設置は、全国的な検討がない。

 

そして、昨今の獣医学や獣医師の現状を、十分に理解しないままに進んでいた。

 

 

特区という名のもとに限定的に進め、今治市と加計学園で獣医学部新設という運びになったのは、やはり釈然としない。


公正さ、誠実さに欠けるという思いが、どうしても湧き上がってくる。

そういう国民の思いを一つも汲み取ることなく、
「正しく進めた。説明もした。」と言い張る政府に、不信感しか残らない。

 

 

(↓度々報道される加計問題、今日も紙面に:7/21河北新報より)

  初めにのり弁ばかり出したがゆえに、面談記録がないとなると、否定しても疑惑は膨らんでしまう。なぜ、いくつも食い違いが出てくるのだろう。