夏がくれば読み返す
5年程前友人達と、長崎旅行した際、
長崎原爆資料館で購入した本。
永井隆氏は、明治41年島根県松江市生まれ。
現在の長崎大学放射線医学教室に在籍、
放射線物理療法の研究に取り組んでいた。
その際の被爆から白血病で余命宣告を受けて
いた。まもなく長崎に原子爆弾が落とされ
大学で救護活動に尽力し三日目に帰宅した時
には、自宅は跡形もなく焼けてしまい、
奥様も骨だけの姿になり、傍にロザリオが
落ちていた。
残された幼い子供たちの様子や、一面荒野に
なってしまったところに、生き残った人々が
バラックを建て寄り添い暮した様が書かれ、
当時の悲惨さが胸にせまる。
そして永井氏のカトリック信仰の深さと
純心さにも心を打たれる。
誰も恨まず、運命を呪うこともせず、
ひたすらに教会の再建を願っている。
死を目の前にしてもひるまず、ただ神に
祈るようすは、驚異的だ。
この手記に書かれたことは独立した異次元の
過去ではなく現在と地続きだと忘れないよう
にしたい。