前回は、ヨセフがイシュマエルの商人に売られ、エジプトへ連れて行かれるまでを書かせていただいた。
今回は、エジプトに行ってからのヨセフについて、書かせていただきたいと思う。

ヨセフは、エジプトのファラオ(王様)の宮廷の侍従長の家に奴隷として売られた。
しかし、神様がヨセフと共におられたので、ヨセフはすべての仕事をうまくこなして、主人に信頼されたため、全てを任されるようになった。
主人がヨセフを信頼したので、神様は主人をも祝福され、その祝福は主人のすべての財産に及んだ。

しかし、ここでまた事件が起こる。

 

囚人となったヨセフ


ヨセフは有能なだけでなく、顔も美しく体つきも優れ、魅力ある男性に成長していた。
ある日、主人の妻はヨセフに、「わたしの床に入りなさい」と言った。
ヨセフは拒んだが、毎日ヨセフに言い寄るので、ヨセフは彼女を避け続けた。

ある日、彼女がヨセフの着物をつかみ、「わたしの床に入りなさい」と言うのでヨセフは着物を残して逃げた。
すると彼女は家の者たちを呼び、「ヨセフが私にいたずらをしようとした」と言い、主人が家に帰ると、ヨセフの着物を見せながら同じことを言ったので、主人は怒ってヨセフを監獄に入れたのである。

しかし神様はヨセフとともにおられたので、ヨセフの行動が牢獄の監守長の目にかない、囚人のことはすべて任されるようになった。

 

給仕長と料理長の夢を解き明かす

するとある日、ファラオの給仕長と料理長の二人が、王様に過ちを犯して監獄に入ってきた。
幾日が過ぎて、その給仕長と料理長の二人は、同じ夜に、それぞれ夢を見た。

二人は夢の意味が分からず悩んでいたところ、ヨセフがその夢を解き明かしたのである。

給仕長の見た夢は、
「一本のぶどうの木が目の前に現れ、その木には三本のつるがあった。
それがみるみるうちに芽を出して、花が咲き、ふさふさとしたぶどうが熟した。
給仕長はそのぶどうを取って、王様の杯にしぼり、その杯を王様に捧げた」

という夢だった。

ヨセフが解き明かした、夢の意味は、
「3本のつるは3日の意味。
3日経てばファラオが元の給仕長の職務に復帰させてくださり、以前のようにファラオの杯をささげる役目をするようになる」

という予言だった。

ヨセフは給仕長に、予言通りになったら自分のことをファラオに話して、ヨセフが無理やりエジプトに連れてこられたこと、無実の罪で牢屋に入れられたことを話し、牢屋から出られるように取り計らっていただきたい。
と頼んだのである。

またその後に、料理長も自分の夢を話し出したが、料理長は3日後に木に吊るされる、という予言だった。

すると3日後に、ファラオの誕生日の祝宴が開かれ、そこで家来たちが居並ぶ中、ファラオは二人を取り調べた。
その結果、ヨセフの予言どおり、給仕長は元の職に復帰し、ファラオに杯をささげる役目をおおせつかったが、料理長は木にかけられ、ヨセフの予言通りになった。

しかしなんと、給仕長はヨセフの頼みを忘れてしまったのである。


それから2年が経った。
こんどは、エジプトのファラオが夢を見た。

 

ファラオの夢を解き明かす

夢の内容は、
「ファラオがナイル川のほとりに立っていると、突然、つややかで肥えた7頭の雌牛が川から上がって来て、草を食べ始めた。
すると、その後から、醜い、やせ細った7頭の雌牛が川から上がってきて、肥えた7頭の雌牛を食べてしまった」

そこでファラオは目が覚めた。

また眠ると、再び夢を見た。
「今度は、太って、よく実った7つの穂が、一本の茎から出てきた。
すると、その後から、実が入っていない、東風でひからびた7つの穂が生えてきて、太った7つの穂をのみ込んでしまった」

そこでファラオは目が覚めた。

朝になって王様はひどく心が騒ぎ、エジプト中の魔術師と賢者を呼び集めて、夢を解き明かしてもらおうとしたが、誰も出来なかった。

そのとき、給仕長はヨセフのことを思い出した。
ヨセフが以前に給仕長の夢を解き明かしたことを話すと、王様は直ぐにヨセフを連れてくるように命じ、ヨセフは直ちに牢屋から出され、散髪して着替えてから王の前に出た。


王は言った。
「わたしは夢を見たのだが、それを解き明かす者がいない。

聞くところによれば、お前は夢の話を聞いて、解き明かすことができるそうだが」


ヨセフは答えた。
「わたしではありません。神がファラオの幸いについて告げられるのです」

王は、自分が見た2つの夢をヨセフに語り終えると、ヨセフは次のように解き明かした。
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「ファラオの夢は、どちらも同じ意味でございます。
神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお告げになったのです。
七頭のよく育った雌牛は七年のことです。
七つのよく実った穂も七年のことです。
どちらの夢も同じ意味でございます。
その後から上がった来た七頭のやせた醜い雌牛も七年のことです。
また、やせて、東風で干からびた七つの穂も同じで、これらは七年の飢饉のことです。
これは、先程ファラオに申し上げましたように、神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお示しなったのです。
今から七年間、エジプトの国全体に大豊作が訪れます。
しかし、その後に七年間、飢饉が続き、エジプトの国に豊作があったことなど、すっかり忘れられてしまうでしょう。
飢饉が国を滅ぼしてしまうのです。
この国に豊作があったことは、その後に続く飢饉のために全く忘れられてしまうでしょう。飢饉はそれほどひどいのです。
ファラオが夢を二度も重ねて見られたのは、神がこのことを既に決定しておられ、神が間もなく実行されようとしておられるからです。
このような次第ですから、ファラオは今すぐ、聡明で知恵のある人物をお見つけになって、エジプトの国を治めさせ、また国中に監督官をお立てになり、豊作の七年の間、エジプトの国の産物の五分の一を徴収なさいますように。
このようにして、これから訪れる豊年の間に食料をできるかぎり集めさせ、町々の食糧となる穀物をファラオの管理の下に蓄え、保管させるのです。
そうすれば、その食糧がエジプトの国を襲う七年の飢饉に対する国の備蓄となり、飢饉によって国が滅びることはないでしょう。

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と、ヨセフはファラオの夢を解き明かし、その解決策まで明示したのである。

 

ファラオに次ぐ地位を得て、エジプトを飢饉から救う

ファラオと家来たちは皆、ヨセフの言葉に感心した。

ファラオは、
「このように神の霊が宿っている人はほかにあるだろうか」
と家来たちに言い、

そしてヨセフの方を向いて、
「神がそういうことをみな示されたからには、お前ほど聡明で知恵のある者は、ほかにはいないであろう。お前をわが宮廷の責任者とする。

わが国民は皆、お前の命に従うであろう。

ただ王位にあるということでだけ、わたしはお前の上に立つ。

見よ、わたしは今、お前をエジプト全国の上に立てる」

と言って、印章のついた指輪を自分の指からはずし、ヨセフの指にはめ、亜麻布の衣服を着せ、金の首飾りをヨセフの首にかけた。

そして、

「わたしはファラオである。お前の許しなしには、このエジプト全国で、だれも、手足を上げてはならない」

とまで言ったのだ。


こうしてヨセフは、ファラオの代理として、エジプトのナンバー2の地位についた。
人類史上、これほどスピード出世した人物はいないだろう。
囚人だったヨセフが、たった一日で王様に次ぐナンバー2の地位になったのである。

この時、ヨセフは30歳だった。

王様はさらに、ヨセフにツァフェナト・パネアという名を与え、祭司の娘アセナトを妻として与えて、ヨセフの威光はエジプトの国にあまねく及んだ。

その後、ヨセフの予言どおり、エジプトに7年間の大豊作が続いた。
ヨセフは、多くの穀物を蓄え、ついに量りきれないほどになった。

そして7年間の大豊作が終わると、7年の大飢饉が始まった。
その飢饉はすべての国々を襲ったが、エジプトには全国どこにでも食物があった。
民はファラオに食物を求め、ファラオはすべてのエジプト人に、「ヨセフのもとに行って、ヨセフの言うとおりにせよ」と命じた。
ヨセフはすべての穀倉を開いてエジプト人に穀物を売り、外国の人たちも穀物を買いにエジプトのヨセフのもとにやって来た。

 

穀物を求めてエジプトに向かうヨセフの兄たち

 

飢饉で困っていたのは、ヨセフの父、ヤコブと兄弟たちも同じだった。
父ヤコブは、エジプトに穀物があると知って、息子たちに、
「どうしてお前たちは顔を見合わせてばかりいるのだ。

聞くところでは、エジプトには穀物があるというではないか。

エジプトへ下って行って穀物を買ってきなさい。

そうすれば、我々は死なずに生き延びることができるではないか」

と言った。

そこで、ヨセフの弟ベニヤミンを除く、十人の兄たちは穀物を買うためにエジプトに向かったのである。
こうして、ヨセフと兄たちは運命の再会をすることになる。

次回は、そのことについて書かせて頂きたいと思う。