心の病気と漢方治療

関連する疾患狭心症、心筋梗塞、不整脈、不眠、精神分裂症、口内炎

1.中国漢方で考える心とは?

i 血脈を主る

血は脾で運化された水穀の精微物質と肺より吸い込まれた大気中の清気が心で合さって作られます。そして心の働きにより全身に送られます。この働きは西洋医学の考える心の働きとほぼ同じです。

ii 神明を主る

神は心に蔵されており、表情態度、知覚、運動などの生命活動を主催します。神は人体において最重要の地位を占めており、大脳や中枢神経の機能と深い関係があります。

iii 汗を主る

「汗は心の液」といわれ発汗と心の働きには関係があると考えています。狭心症や心筋梗塞の発作時には異常な汗が出ることがありますし、ある種の発汗異常の症状は心を改善する薬草を使います。

iv 舌に開く、華は面にある

心は舌と経絡でつながっています。寝不足やストレスなどで心が熱を持つと口内炎ができやすくなります。

2.心と関係が深い病気について

中国漢方で考える心の主要な働きは、主血と蔵神です。
この働きが乱れると、心臓の働きと大脳精神に関係する病気が発生します。よって心と関係の深い病気は狭心症や心筋梗塞、不整脈などの心臓の病気のほかに不眠症や精神分裂症などの大脳精神に関係する病気もあります。また心は汗を主るため一部の発汗異常も心から治療します。
さらに心は舌と経絡でつながっており、心に熱を持つと口内炎ができやすくなります。

脾の病気と漢方治療

関連する疾患食欲不振、慢性胃炎、胃潰瘍、過敏性腸症候群、慢性下痢症、便秘症、慢性疲労症候群、重症筋無力症

1.中国漢方で考える脾とは?

i 運化を主る

口からか行った食物と水分を消化吸収する働きのことです。脾によって運かされた水穀の精微物質によって気や血が作られるため「脾は気血生化の源」「脾は後天の本」などと言われます。

ii 統血する

脾は血管を保護して血液が血管外にもれないようにコントロールする働きがあると考えられています。ある種の出血症は脾を丈夫にすることにより治ることがあります。

iii 肌肉、四肢を主る

脾の運化により作られた気血により肌肉は栄養されています。慢性の四肢のだるさ、筋肉の萎縮などは脾を丈夫にすることにより治療します。

iv 口に開く、華は唇にある

脾は口と経絡でつながっており、食欲に深い関係があります。胃腸の調子が悪いと口角炎や口内炎ができやすくなります。

2.脾と関係が深い病気について

中国漢方で考える脾の主要な働きは、運化統血です。この働きが乱れると、胃腸の働き(消化吸収)と出血に関係する病気が発生します。よって脾と関係の深い病気は食欲不振慢性胃炎、胃潰瘍、過敏性腸炎、慢性下痢症、便秘症などの消化器の病気のほかに血小板減少性紫斑病や便血、機能性子宮出血などの出血性疾患も脾が原因になることがあります。また脾は肌肉を主るため筋無力症や慢性疲労症候群なども脾を丈夫にすることにより治療します。さらに脾は口と経絡でつながっており、口角炎や口内炎も脾から治療していきます。

腎の病気と漢方治療

関連する疾患腎炎、排尿障害、水腫、骨粗鬆症、耳鳴り、更年期障害

1.中国漢方で考える腎とは?

i 水を主る

水液代謝を調節する働きのことです。腎は体内で利用された不要な水液を膀胱へ運んで尿として排出させ、有用な水液は再吸収して肺へ上輸します。

ii 精を蔵す、生長・発育・生殖を主る

精とは生命の根元物質を意味しており、父母から受けた生まれつきの精を「先天の精」と言います。「先天の精」は食物から取り込んだ「後天の精」によって絶えず補給されています。
精は腎に蔵され、次第に充盛して生長・発育を促進します。思春期になり腎精が充実すると「天癸」が生じて女性は排卵・月経が、男性は精子の産生が始まります。
精は女性の7の倍数で、男性は精子の8の倍数で変化していきます。女性は49歳頃に「天癸」がなくなり閉経を迎えます。老化現象は腎精の充実度と関係が深くなります。

iii 骨を主り、髄を生じる、脳に通じる

精は集まって髄(骨髄・脊髄)を生じます。骨髄は骨格を形成して骨や歯を丈夫にし、脊髄は集まって脳になり頭目を聡明にします。

iv 耳に開く、二陰を主る、華は髪にある

腎は耳と経絡でつながっており、聴力に関係が深くあります。また腎精は髪の栄養と関係が深く、老化によって髪が抜けたり白髪になるのは腎精の衰えと考えます。
二陰とは尿道と肛門のことで排尿と排便の異常に腎が関係することがあります。

2.腎と関係が深い病気について

中国漢方で考える腎の主要な働きは、主水と蔵精です。この働きが乱れると、排泄(排尿)と内分泌(ホルモン)に関係する病気が発生します。よって腎と関係の深い病気は腎炎などの腎臓本体の病気のほかに排尿障害、夜尿症、前立腺肥大症、水腫、更年期障害、インポテンツ等と関係が深くなります。また腎と耳は経絡でつながっているので、耳鳴り、難聴などの耳の病気は腎から治療します。さらに腎は骨を主り髄を生じ脳に通じるため骨粗鬆症、骨髄性の貧血、健忘症、認知症なども腎と深く関係しています。

肺の病気と漢方治療

関連する疾患風邪、肺炎、気管支炎、喘息、肺気腫、慢性鼻炎、花粉症、慢性咽喉炎、蕁麻疹

1.中国漢方で考える肺とは?

i 宣発、粛降を主る

宣発は外、上に向かって発散することを、粛降は内、下に下降させることを意味します。これは肺が気や津液を体のすみずみまで布散して代謝されたものを下の腎や膀胱下降すること、大気中の清気を吸入し濁った気を呼出すること、体表で汗腺を開閉して体温を調節することなどの働きをさしています。

ii 気を主り、呼吸を司る

肺は大気中の清気を吸入して気の生成に関与するとともに、呼吸を行うことを意味します。

iii 水道を通調する

肺が水分代謝に関係していることを意味します。脾胃により運化された津液を宣発・粛降の働きで全身に布散し、一部を汗として外泄し、代謝された排水を下方に降ろしていく働きをさしています。

iv 鼻に開く、皮毛を主る

肺は鼻と経絡でつながっています。また皮膚も肺と関係が深く、宣発によって潤され、汗の調節を行います。

2.肺と関係が深い病気について

中国漢方で考える肺の主要な働きは、宣発粛降です。この働きが乱れると、肺と呼吸器に関係する病気が発生します。よって肺と関係の深い病気は風邪、肺炎、気管支炎、喘息、肺気腫、慢性咽喉炎などの病気があります。また肺は皮毛を主るため蕁麻疹などの一部の皮膚病も肺から治療します。さらに肺は鼻と経絡でつながっており、慢性鼻炎花粉症も肺と関係があります。