母ひとり子ひとり

 

こゆきさんと母ひとり、子ひとり、週2ヘルパーさん(妹)で

暮らし始めて半年くらい経った。

 

尖足でうまく歩けない、頭と目がグラグラでフラつく私だが、

それでも。家に帰ればこゆきさんが待っている、と思えば励みになる。

 

動きまわるこゆきさんを危険な目にはあわせられないから、キッチンの

カウンターに、進入防止のガードを作った。

 

また、玄関のドアを開けた瞬間に飛び出さないよう、脱出防止の扉を設置した。

 

そして、こゆきさんが、自由に出入りできるよう、

リビングと寝室にはそれぞれ、小さな猫ドアを業者さんに頼んで付けてもらった。

 

すべて、こゆきさんファーストな生活だ。

 

だけど、私が遊んであげるのは難しい。頭と目がグラグラするし、

うまく歩けないからこゆきさんの動きについていけない。

もっぱら遊びは妹と友人Tが担当してくれた。

 

うちに来たときは、500gにも満たなかった、こゆきさんだが 

欲しがるだけ、キャットフードを与えるというママの愚行のせいで

みるみる大きくなっていった。

 

生後8か月、家に来て半年が過ぎた頃から、身もだえするようになった。

 

これはさかり、というやつだ。

 

日本ネコではないぶん、発育がいいのか、思ったより早い。

 

可哀そうだけれども、病院に連れていかなくてはならない。

 

本当は子を産ませてあげたかった。

 

こゆきの子だからここゆき と名前をつけたかった。

 

でも当時の私に多頭飼いは不可能だった。

 

家の近くの、高度医療センター という動物病院に相談に行った。

 

設備の整ったハイレベルな病院だ。

 

「うちは手術の後、念のため2泊はしてもらうことになっています」と

看護師さんに言われた。

 

丁寧で慎重な体制の病院らしい。金額も相場よりもずいぶん高いが、

その分丁寧に診てもらえるのはありがたい。

 

大事な大事なこゆきさんだ。

 

 

2泊3日は離れがたいが、不妊手術は避けて通れない。

 

こゆきさんには「なにすんのよっ!」という感じで、抵抗されたが、

妹と友人Tと3人がかりでキャリーケースに入れて朝一番で病院へ送り届けた。

 

夕方になって、病院から私の携帯に連絡があった。

 

「手術は無事に終わったけれども、こゆきちゃんは落ち着かないから 

おうちに帰った方がいいんじゃないか」という申し出だった。

 

えっ?術後2泊は絶対って言ってなかったですか?と私。

 

こゆきさんは、病院で相当暴れて、

シャーシャー言いまくり誰にも触らせないという。

看護師さんたちもたいへん困って、おうちに返そう、となったらしい。

 

そんなことを言われても、手術当日のこゆきさんを家に連れて帰って

何かあったら怖いし、なんとか1泊だけでも、とお願いして置いてもらった。

 

翌日、エリザベスカラーを付けたこゆきさんを引き取りに行ったが、

看護師さんたちの眼は冷たかった。

 

一応 暴れまくったお詫びを言って、

「今後も検診とかに連れてきてもいいですかね?」

と聞いてみた。

 

先生は「まあ、ウチは野良猫もみますから・・」だと。

 

ほう、こゆきさんは野良ちゃんと同じレベルだってことか。

 

一応 血統証付なんですけど。

 

                           to be continued.

 

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