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心の調律コーチ 深尾遊です。

 

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感覚が敏感な子どもたちと過ごす、わが家の気づき

~『やる気がない』に見えてしまう、その前に~

わが家の長男と次男は、音や肌ざわりに敏感なところがあります。

大きな音が苦手だったり、着られる服が限られていたり。

人の声や教室のざわめきが重なると、「うるさい」と感じることもあります。

動き出すまでに少し時間がかかること、

声をかけられてもすぐに返事が出ないことも、

日常のなかにあります。

 

次男は小学1年生から少年野球を続けています。

でも今でも、監督から声をかけられたときに「はい」と言えず、

うなずいたり首を振ったりすることがあります。

 

長男も、友達に話しかけられてすぐ返せなかった経験が重なり、

人との関わりに自信をなくしかけた時期があります。

 

周りから見れば、

「やる気がないのかな」

「反応が薄いのかな」と映るかもしれません。

 

けれど、子どもを見て、調べて、私が今感じているのはこうです。

この子たちが苦しいのは、感覚の敏感さそのものだけではありません。

反応が少し遅れたときに、周りからどう受け取られるか。

その積み重ねのほうが、心には大きく残ることがあるのではないか。

 

だからこそ、私たち大人にできることがある。
それは「早く返事をすること」を求めるよりも、

「少し待っても大丈夫」と思える環境を増やすことだと思っています。

なぜ「やる気がない」に見えてしまうのか

~音が重なると、必要な声を選びにくいことがある~

教室やグラウンドには、たくさんの音があります。

友達の話し声、椅子を引く音、先生や監督の声、歓声、放送、空調の音。

多くの人は、そのなかから必要な音に意識を向け、

ほかの音を背景のように受け取ることができます。

けれど、感覚が敏感な子のなかには、

複数の音が同時に入ることで疲れたり、状況をつかみにくくなったりする子もいます。

本人にとっては、単に「うるさい」というより、

いろいろな情報が一度に届いて、

何から受け取ればよいのか分からなくなるような感覚に近いのかもしれません。

感覚の困りごとは、一人ひとり異なる

国立障害者リハビリテーションセンターの調査では、

発達障害のある人から寄せられた415件の回答のうち、

「最もつらい感覚の問題」として聴覚に関する困りごとが約55%を占めました。

視覚・触覚・嗅覚に関する困りごとも、それぞれ約1割ありました。

また、この調査では、

感覚の過敏さは「高い音」や「まぶしい光」など特定の刺激だけでなく、

複数の刺激が同時に入ることで、

疲れたり状況を把握しにくくなったりすることも含まれると報告されています。

 

もちろん、この数字だけで目の前の子どもの感じ方を決めることはできません。

感覚の困り方も、助けになる方法も、本当に人それぞれです。

ただ、「返事がない」「動き出しが遅い」という姿の背景に、

本人なりの一生懸命な情報処理がある場合もある。

そう知っているだけで、大人の見方は少し変わる気がします。

 

参考: 国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害のある人の感覚の問題」

入ってくる情報でいっぱいになると、言葉にする余力が減ることがある

ここからは、看護の現場で見てきたことと、わが子の様子を重ねた私なりの理解です。

言葉で返事をするには、短い時間のなかでいくつものことをしています。

  • 相手の言葉を聞き取る

  • 意味を理解する

  • 返す言葉を考える

  • 声に出す

周りの音や緊張で頭のなかがいっぱいになっていると、

この一連の作業に少し時間がかかることがあります。

うなずくことはできても、「はい」という一言が出ない。

首を振ることしかできない。

そんなとき、それは反抗や無関心ではなく、

その子がその瞬間に出せた精いっぱいの返事なのかもしれません。

わが家で大切にしている3つのこと

1. 「遅れた」ことより、「どう受け取られたか」を大事にする

感覚の敏感さは、成長とともに変化することもあります。

ただ、すぐになくなるものと考えるより、

「その子に合った付き合い方を見つけていくもの」と捉えるほうが、

わが家にはしっくりきています。

 

一方で、心に残りやすいのはこんな経験です。

「また返事ができなかった」
「またタイミングを逃した」
「きっと変に思われた」

こうした経験が重なると、感覚の負担とは別に、

集団や人間関係への苦手意識が育ってしまうことがあります。

だから私は、「もっと早く」「ちゃんと声に出して」と急かすよりも、

返事が少し遅れても関係は壊れなかったという経験を増やしたいと思っています。

2. 我慢を増やすより、選べる手段を増やす

困りごとへの対応は、

我慢の量を増やすことではなく、

逃げ道や選択肢を増やすことだと感じています。

感覚への工夫

  • スピーカーの近くを避ける、壁側や出口の近くなど、安心しやすい席を選ぶ

  • 服のタグを外す、着やすい素材や形をそろえる

  • つらくなったときは、保健室や静かな場所へ移動してよいと事前に共有しておく

  • イヤーマフや耳栓などを、本人が使いたいと感じたときに選べるようにしておく

イヤーマフや耳栓が助けになる子もいます。

ただ、わが家の子どもたちは「目立つこと」のほうが気になるようで、今のところ使っていません。

それでも大丈夫。道具は正解ではなく、あくまで選択肢のひとつです。

わが家では、席の位置と「しんどくなったら少し抜けてもいい」という事前の許可が、

今のところ大きな支えになっています。

返事への工夫

大人とのやりとりでは、

うなずきやOKサイン、手を挙げることも、

きちんとした返事として受け止めてもらえると安心です。

 

同世代の友達とのやりとりでは、

すぐに長い言葉を返すのが難しいこともあります。

そんなときは、

「うん」「ちょっと待って」「あとで話すね」など、

短い一言をひとつだけ持っておくのも方法です。

 

言葉が出ないときでも、

相手のほうを向く、目を合わせる、少しうなずく。

そんな小さなサインがあるだけで、

「無視された」と受け取られにくくなることがあります。

 

大切なのは、本人が「これならできそう」「使っていい」と思える方法を、

一緒に見つけることだと思います。

3. 採点されない時間と、安心できる場所をつくる

すでに「またできなかった」という経験がたくさん積み重なっているとき、

練習を増やすことが、かえって苦しくなる場合もあります。

 

そんなときは、一度「すぐに返事をすること」が求められる場所から離れる時間も必要かもしれません。

好きなことが同じ人と過ごす時間。
返事の速さを気にしなくてよい、文字でのやりとり。
ただ好きなことに夢中になれる場所。

興味の合う相手となら、話題を探す負担が減ります。

文字なら、自分のペースで言葉を選べます。

そうした安心できる場所でこそ、

「話しても大丈夫だった」「伝わった」

という経験が少しずつ増えていくことがあります。

回復のために必要なのは、がんばりを足すことだけではありません。
評価されず、急かされず、そのままでいられる時間もまた、

大切な支えになるのだと思います。

『返事が遅い子』ではなく、『返事を用意している子』

感覚の敏感さを、すぐに変えることは難しいかもしれません。

でも、反応が少し遅れたときに、周りがどう受け取るかは変えられます。

先生や監督が少し待ってくれること。
友達が「あとで返してくれるんだな」と知ってくれること。
親が「今、返事を考えているんだね」と受け止めること。

その小さな積み重ねが、子どものなかに残る記憶を変えていくのだと思います。

この子は、返事が遅い子ではない。
たくさんの情報のなかで、一生懸命に返事を用意している子。

そう見てもらえる場所がひとつずつ増えていけば、

子どもは少しずつ、

「自分のままでも大丈夫」と思えるようになるのではないでしょうか。