時は流れて江戸時代中期より立山登拝が盛んになると 立山権現社 (現在の雄山神社)の 御前立社 として新川一郡の崇敬の的となり、立山参詣者は必ず新川神社に参詣したものであります。昔は元服登拝と申して「越中男児は15歳になるまでに自力で山頂の雄山神社に詣でなければ一人前と見なされない」という成人通過儀礼としての習慣があり青年達は隊を組み、赤字に白の染め抜きの流旗を押し立てて新川権現(新川神社)に参拝し、宮から水路の堤防沿いに上滝に至り常願寺川を渡り芦峅寺を経て立山頂上雄山神社峯本社に参詣し、帰途必ず新川神社に御礼参りをし、村人達は無事参詣を祝いその労をねぎらって酒を酌み交わし成人を祝ったものであります。
今日まで県下の小中学校で行われる立山登山には、この精神と伝統は継承されているのです。
元和元年に廃城になった新庄城趾は前田藩主により御陣屋が修造され田畑倉庫が置かれたこともあったがいつしか荒廃し、畑地に開拓されました。
明治になり学制が発令され、寺子屋などで読み書きを教えていた新庄にも小学校が設置されることになりましたが、なにぶんすぐに大きな校舎が準備できるはずが無く、とりあえずは正式な建物が出来るまでの間、町新庄村郷社新川神社神職舩木守人宅を借り受け開設されました。後に新庄城趾に広大な運動場と共に立派な校舎が建てられ今日に至ります。いわば新川神社は新庄小学校の始まりの地であります。
かくして永い歴史を有する当社は元来新庄城の 鬼門 に鎮座し城下を守護したことから鬼門除け の厄除の御利益がある神社として今日まで厄年に当たる人々は正月に多数お祓いを受けられ、無病息災を祈られます。立山登拝が盛んになると常願寺川の水源地である立山を仰ぐ登山安全祈願の社として尊崇され、暴れ川の水を鎮める水神として歴代の用水組合を初めとする農耕に従事される新庄の人々は五穀豊穣を祈り篤く崇敬されております。 時代は明治、大正、昭和、平成と移り変わり、戦中戦後の国難を経て国の復興・高度成長期と共に新庄の町も様変わりをしていきました。昔からの土地柄と申しますか、各方面に繋がる街道が交差する交通の要所という利点が更に発展し、新しい道として旧国道8号線、当時は産業道路とよばれた草島線が敷かれ、広大な農耕地が広がる郊外地ということから機械工業団地、問屋センターなどが近隣に誘致され多くの企業が新庄地内で事業をされてきました。広大な水田は新興住宅地へと姿を変えていきました。 昭和の時代から懸案でありました人口の増加から全国の中でも指折りのマンモス校下の分校が長年の審議を経て平成22年4月1日、新庄北小学校が新設開校されました。常願寺川の水害で悩まされた校外の農耕地は今では農業、工業、商業、新興住宅地と多くの人達が集う複合環境の市街地へと発展して参りました。 しかしながら今日の新庄の繁栄のいしずえには、四百年前に被災された先祖がこの地に留まり、流されてきた巨石を取り除き、鍬を振るい水田を再び開き、この土地に汗と血を染みこませて復興されてきた軌跡の上に成り立っていることを我々は忘れてはなりません。我々はその土地の上に住まいを建てさせていただいている、その土地の上で事業をさせていただいている、という事なのです。
近年、大きくは世界的に地球環境問題や地球温暖化に代表される気候の変化、度重なる未曾有の自然災害は、物質文明と合理主義に慣れすぎた現代社会の構造に波紋を投げかけているように感じられます。
社会の構造は農耕社会から機械工業、情報化社会へと変化し、その代償として過去の伝統と歴史、または自然を破壊して発展してきた近代の我々の社会に何かを問いかけているようにも感じられます。精神的な支柱としての「やまとごころ」や、日本人としての道徳を伝える「教育勅語」は公には封印され、先人が伝えてきた日本人独自の精神性の喪失が社会的に問われています。 このように永く久しい時を経て今、来る平成28年(2016)は新庄に遷座された元和2年(1616)より400年という歴史的な節目を迎えます。このような思いを若い世代と後世に伝えるためにも、新庄の先人達が住民の心の拠り所である新川神社の再興をこころざし、現在地に遷座を成し遂げられたその御苦労を偲び、今私たちが住む地域社会の繁栄と平安無事を感謝する「新川神社新庄御鎮座四百年祭」と、記念事業が計画されています。
常願寺川の氾濫に悩まされてきた新庄町。四百年前に被災された先祖が被災間もない翌年には新川神社を復興し、心の拠り所として立ち上がってきた不屈の精神を、現在その土地の上に暮らすわれわれが「我が心」として継承して想いを馳せる事が、平成23年3月11日未曾有の天災を被った我が国の復興に向けて魂を奮い立たせる前向きな力になるのではないでしょうか。「温故知新」。故きをたずねて新しきを知る。 新川神社の歴史は誠に古く、そして現在を通じて未来へと続いて行くのです。
