もしこれまで、『不変の真理は現在形で表す』とか「経験は現在完了で」などという項目を暗記することを時制(という文法)の学習だと思っていたのなら、そういうことはもうやめにしませんか。

これからここで始まるのは、理解する英文法。暗記をなくすことはできませんが、多くの丸暗記を強いることもありません。

これからしばらくは、文法問題を解くのではなく、時制という枠組みの説明をしていきます。「少し難しいな」と感じることもあるとは思いますが、それはきっととても大切なところ。単純化によってこぼれ落ちてしまいそうな部分をなんとかあなたに伝えようとしている場所のはずです。どうかあきらめてしまわずに、何度も読み直してみて下さい。実際にお話をする機会のある方は、何度同じ質問をしたって構いません。

 

それでは説明を始めることにしましょう。

 

前回までの『動詞の形とその意味1~6』で説明した通り、英語の時制は現在と過去の二つです。過去から現在、そして未来へという流れは、時間であって、時制ではありません。英語の時制は動詞の形によって示されるものだからです。

 

「『今、実際にそうだと思ったら現在形、そうでなければ過去』でしょ?」

「素晴らしい、よく復習が出来ているね」

「でも進行とか完了もあるんだよね…」

「あぁ、それは『(そう)』というもので、時制のオプションみたいなものだね」

「オプション?」

「必ず現在進行とか過去完了とかって時制とセットになっているでしょ?」

「うん」

「だから一つ一つ整理をしていけば、そんなに難しいことではないんだ。ただ、…」

「『ただ』?」

 

最初に皆さんに約束して欲しいのは、「『~しているところ』という日本語だから進行」であるとか、「『~した』だから過去」などと訳語の語尾だけで時制を決めようとしたり、「『経験』を表すから現在完了」などと、なんとなく用法に当てはめて時制を決めようとするのはもうやめにするということです。

 

「じゃあ、どうするの?」

「英語の枠組みを理解して覚えることになる。まずは動詞を大きく二種類に分けるところから」

「自動詞と他動詞?」

「あぁ、それは時制とは無関係。時制で大切なのは、動作動詞状態動詞

「動作と状態?それぞれの単語を覚えるの?」

「いや、覚えるのは基本的には定義だけで大丈夫」

 

よく出題される単語を覚えておけば、試験では速度面で役に立ちますし、何より話す時には便利だと思います。ただ、時制全体の理解のためにも、まずは定義を押さえることからスタートして下さい。今年度(令和三年度)からは、中学生もこの定義を理解しておく必要があります。

 

  動作動詞:移動や行為など、急に始められて、急に終えられること

  状態動詞:存在や感覚など、特別なことがなければ、長い間変わらないこと

 

同じhaveという動詞でも「食べる」という意味なら動作ですし、「持っている(所有している)」という意味なら状態だったりします。単語を覚えるよりも、定義を覚えておくことで、どちらかを判断できるようにすることが大切です。またrain/snowといった人の意思と関係なく、突然始まって、突然終わるものも動作に含まれますので注意しましょう。

図すると以下のようになります。

 

  【図1】

「だいぶ長さに差があるね」

「そうだね。厳密に何倍とかいう話ではないけれど、動作と状態では全然長さが違うよね。実はこの長さの違いが相と組み合わさることで、時制の表現に様々な広がりが生まれてくるんだよ」

 

動詞の形とその意味8に続く)

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