今日も朝から疲れを身に纏って電車に乗る。
幸い最初の電車には座ることができて、寝る態勢に入った。
椅子の並びには、いつものぐうちゃんが、豪快なイビキを発しているが、それにはもう慣れている。
と…大柄なおとこがズンズンとやって来て、通路を挟んだ向かいの長椅子に座った。
勢いがよかったから、前から座っている左右の方は驚いたような表情を浮かべた。
しかし、その表情は間もなく俯いたり、嫌そうなものに変わった。
それは、彼がヨレヨレのスーパーの買い物袋から、食べかけの柿ピーと発泡酒のロング缶を取り出して、飲み食いを始めたからだ。
ガサガサガサと小袋の中に太い指を突っ込んで柿の種とピーナッツをつまみ出し、口に運ぶ。
ポリポリ、ボリボリ、食べる。
ゴクゴクゴックンと、発泡酒のロング缶を口に運び、飲む。
ぷ~ん…車中に柿の種の臭いが広まる。
パラッと数粒の菓子やピーナッツが床に落ちる。
そして、床から拾って食べる。
ガサポリゴックンぷ~んパラッ…が延々と続く。
落としたお菓子を放置しないのは良いが、落ちたものを拾って食べる様子には、顔をしかめる人もいる。
私は、幼い頃、故郷の電車で、酒臭い大人が柿ピーや天ぷらをつまんで食べながらワンカップの日本酒を飲んでいた光景を思い出していた。
新幹線や観光列車以外ではあまり見ない光景だなぁ…などと思いつつ、私はいつしか寝入ってしまった。
乗換駅に着いて目が覚めた。柿ピーおとこは、もういなかった。