『積んである読みかけの本のように』
読みかけてからどれ位の時が
流れ去ったのだろう
読みかけの本は
小説類の類ではないのではないか
作者はネクタイによって
職業まで推測させる
一般の職業人には普通のネクタイを
芸術家には蝶ネクタイを
その象徴として堀刻んでいるのではないか
積んではいるが
読みかけの本の内容は常に頭の中に
残像のように浮かび
男の中から消えることはない
聞いてはいないが眼差しは
その読みかけのページを追い続け
男に問いかけて止まない
多分解釈が必要なのだ
作者『舟越』がじっと耳を澄ましながら
見えないイメージが湧き上がるのを待つほどの時間が必要なのだ
その先に読み進むことが困難で
本は積み重ねられ男を待っているに違いない
男の解釈が解けて再び
新たなページが開かれるのを
本は積み重ねられたまま男を待っているに違いない