8日目。
朝6時に本堂で勤行があり、信者の皆さんと一緒に般若心経を唱えた。
相部屋だった人は、
四年越しの歩き遍路の夢を諦めて、バスと電車で行くことになった。
師匠が言うには、薬王寺まで無事に辿り着けるかどうかで、最後まで完結できるかが決まるそうだ。
確かに山越はきつく靴擦れや膝や足を傷める可能性が高い。
今日は、20KM弱の鯖大師までなので、食堂でコーヒーを飲んでから出発した。
パソコンでメールのチェックをしようとしたが、PHSでの接続はできなかった。公衆電話の回線を使う。
まるで、ホテルでくつろいでいるかのような朝を過ごし、
9時過ぎにゆったりと出発した。
お遍路では、ありえないことだ。
鯖太師は、朝のお勤めで護摩を焚くので、それが見たくて宿坊に泊まることにしたのだ。
薬王寺を出て、国道を歩いて間も無く友達から携帯に電話が入った。
「○君が、遺体で見つかった。」
遍路を始めて、ずっと、彼のことは祈ってきた。
(早く家族に電話をするように。)
昨日は、初めて、お札の裏に願い事を書いた。
(早く家族に電話をするように。)
お札には、効力が在ることを知っていたから、
そんな使い方をするものではないことを知っていたが、
裏書して祈った。
その結果が、これだった。
ショックだった。
バイパス道路を避け、川沿いの山側の道を歩く。
しばらく歩いたところで、おしっこがしたくなったので、
立小便をした。
お尻に違和感が、、、。
「えっ?まさか。」
すぐ、川に下りた。
「あ~、やっちゃった。」
以前にも経験がある。
49才の叔父を亡くした時だ。頭では理解しているつもりでも、
体は正直だ。余程ショックだったのだろう水のような便だった。
今回もまた、頭ではわかっているつもりだったが、
ショックは隠せない。
川で、下着を洗い、半身裸になって体を洗った。
人のいない道路でよかった。
こんな格好見られたくない。
少し休憩してから、
また、歩き出す。
同級生とは、お遍路に出る一週間前に電話で話した。
「大丈夫だよ。心配しなくていいよ。自殺なんかしないから。」
約束をした。
「約束するから。」
彼は、そう言った。
なのに。
人は、なぜ、心を病むのか?
それを直すマジックのような奇蹟の力はあるのか?
今回の遍路は、その答えを見つけるためだった。
去年、同じように従兄弟を自殺で亡くしている。
うつ病の感じはあったが、病気と断定できる程ではなかった。
だから、油断した。
従兄弟は、家族の住む家が見える山の中腹で缶ビールを飲み、
車の窓に目張りをして、練炭自殺した。
遺体は、きれいだった。
眠るように、きれいなまま逝ったのだ。
同級生も一緒だった。
彼の父の墓の近くで逝ったそうだ。
あれ程、元気で楽しそうにしてた彼が。
心の問題、変化は、ほんとうに解からない。
何故なのか。
それが知りたい。
川に沿って歩く。
牟岐駅を過ぎたところに、お接待所があり、
地元の婦人会の人がお遍路さんを接待している。
ここで、休憩させてもらう。
お遍路は、接待の変わりにお札を渡すらしい。
修行僧のお札から来ているのかもしれない。
いつものお話をして、お茶を楽しむ。
途中、コンビニによって、新聞を確認。
載っていた。しかも、一面。
番外札所 鯖太師
3:30PMには、着いた。
お札には、
(彼が、早く成仏できますように。)
と裏書きした。