リブログ記事帯状疱疹ワクチンでアルツハイマー病が予防できる?
個人的備忘録を残していますが、この話題は皆さまにも参考になるかもしれないと思い公表します。岐阜大の下畑先生のブログ他を参考にしています。【概略】イギリスでは帯状疱疹ワクチンの公的接種制度が2013年に導入された。接種対象年齢が「1933年9月2日以降に生まれた人(80歳未満)」と定められていたため、その前後に生まれた人たちが2つのグループ分類された。この時期に使用されたワクチンは生ワクチン(Zostavax)。【結果】接種の有無の二つのグループで7年間に新たに認知症と診断される率がワクチン接種群では20%低下。この効果はインフルエンザなど他のワクチン接種や併存疾患,健康診断の頻度などの要因では説明できず,帯状疱疹ワクチンの効果と考えられる。【考察】今回の研究の対象となったのは弱毒生ワクチン(Zostavax)。現在イギリスでは新しい不活化ワクチン(Shingrix)に切り替えられているため、今後はこの新しいワクチンで同様の効果が確認されるかが注目される。 帯状疱疹ワクチンは従来,神経痛や帯状疱疹合併症(神経障害、髄膜脳炎など)の予防を目的として接種されてきたが、この研究結果は,このワクチンが「認知症の予防」へ応用できうることを強く示唆している。接種の年齢に関しては、この試験では70歳〜79歳だったが、もっと早く接種すると「認知症予防」効果がより顕著になるのかもしれない。Eyting M, et al. A natural experiment on the effect of herpes zoster vaccination on dementia.Nature. 2025Apr2.(https://www.nature.com/articles/s41586-025-08800-x)【その後の論文を参考に帯状疱疹と認知症の関係をまとてみます】・科学誌Natureに、誕生日で接種資格を区切る「自然実験」という画期的な方法を用いた研究結果が報告され、帯状疱疹ワクチン(弱毒生ワクチン)が認知症の発症リスクを約20%低下させることが信頼性の高いデータで示された 。・ワクチンが効くメカニズムは、帯状疱疹ウイルスが直接脳で起こす炎症を防ぐ効果に加え、その炎症が引き金となって目覚める別のヘルペス属ウイルス(認知症との関連が疑われる単純ヘルペスウィルス-1)の活動を未然に防ぐ「悪の連鎖」を断ち切る可能性が考えられている。・ワクチンに含まれる免疫力を高める「応援団(アジュバント)」成分が、免疫システム全体を鍛え、脳のゴミを掃除しやすくするなど、体を「認知症になりにくい体質」へ変える可能性も指摘されている。・ワクチンには実績のある「従来型(弱毒生ワクチン)」と「新型(シングリックス)」があり、両者を比較した研究では、強力な応援団を持つ新型シングリックスの方が、従来型よりさらに認知症リスクを17%低くする結果が報告されている。・したがって、信頼性を重視するなら「弱毒生ワクチン」を、理論上の効果を期待するなら「シングリックス」を選ぶとよい。もちろん帯状疱疹へ予防効果は「シングリックス」の方が優れているとされる(下表)。