わたしはまだ

リュウさんを壊すことができます。

 

リュウさんのお父様の名前は憶えています。

あと何年かは忘れないでしょう。

お父様のフルネームでweb検索をすれば

ご実家の電話番号も関連会社もヒットします。

 

リュウさんが今も

そこに勤めているのか知りません。

そこにいなくても構いません。

なにかしら繋がりはあるはずだし

繋がりがなければ

またご実家に電話をかけるだけです。

 

リュウさんの年若い奥様は

不倫をしていますよ、と

数回電話をかけるだけです。

事実でなくても構いません。

その言葉がリュウさんの耳に入りさえすれば

リュウさんを苦しめることが目的であれば

目的は達成できます。

わたしの目的はそこにはありませんが。

 

 

あの頃の仲間たちに

このブログを教えることもできます。

アオイ、マキ、トモミ。

 

 

アオイのSNSは見つけましたが

彼女に連絡する気はありません。

今さらアオイに謝罪をしたとしても

それはアオイの心を軽くするでしょうか。

自分が気持ちよくなるための謝罪は

何の役にもたたないと

わたしは前夫から教わりました。

アオイにあの時の謝罪をするより

わたしが罪悪感を抱えて生きていく方が

アオイのためになるでしょう。

 

 

マキはどうでしょう。

リュウさんがあのとき選んだのは

わたしなのだと

マキに今告げたとしてそれがなんなのか。

それに、本当にそうだったとは限りません。

わたしとマキと同時進行で

なにかがあった可能性もあるのだから。

それにマキを傷つけるのは忍びない。

彼女はわたしを信じてくれました。

彼女は善良なひとです。

わたしはそれを知っています。

 

 

わたしはトモミのSNSを3つ見つけました。

そのどこかにブログの

URLを貼ったメッセージを送ったら

彼女はどう思うでしょう。

トモミは結婚して

2人のお嬢さんのお母さんになりました。

お子さんはあの頃のわたしのこどもと

同じくらいでしょうか。

トモミも結婚後大変な時期があったようです。

今はその嵐も通り過ぎたのでしょうか。

母になったトモミは

わたしのことを軽蔑するでしょうか。

 

トモミはあの季節の出来事を知って

傷つくでしょうか。

それとも、振り返って自分の娘たちを見やって

今の日常にすぐ戻れるのでしょうか。

彼女はわたしのことを

気の毒に思うのかもしれません。

いずれにせよトモミから

返信が来ることはなさそうです。

 

 

彼女たちには彼女たちの物語があります。

わたしだけの物語があるように。

 

 

自分のことをわかって欲しいなどと言うのは

甘ったれた考えです。

理解しています。

恥じています。

 

 

想像するだけです。

自分がひとを傷つける力を持っているのだと

思いたいだけです。

今さらそんなことをすることが

どれだけ醜いかは知っています。

ひとを傷つけようとして

憐れまれるのも愉快なことではありません。

 

 

ただ、考えるだけ。