わたしの職場の友達、ミオちゃんが
わたしに話してくれたことがあります。
自分は人生を、運命を変えるようなひとに
出会ったことがないと。
ミオちゃんには
好きなひとがいる、とだけ
話をしたことがありました。
人生を変えられるような人に出会ったこと自体
とても貴重なことなんだ、と
ミオちゃんは休憩室のいつもの窓際の席で
自販機の少し薄いココアを飲みながら
わたしに話してくれました。
秋だったように思います。
窓の外にはイチョウの木が
色づいていたように思います。
わたしが彼の部屋を
訪れた後だったのでしょう。
彼は確かにわたしの人生を変えました。
安っぽい言い方ですが
そういうしかありません。
たとえば夫と出会って結婚したことも
そう言えるかもしれませんが
夫がわたしの人生や運命を変えた、と言うと、
どこかしっくりきません。
結果的にうまくいかない
時期があった、くらい。
彼はわたしの生き方を変えました。
生真面目な生き方しか知らなかったわたしを
自分が女であることに
気づいてもいなかったわたしを
生真面目な顔をしたまま
そうでないことを考える女に変えました。
それが貴重な出会いだったと
言うことはできません。
出会わなければよかったと
思っているのかもわかりません。
おそらく、わからないままなのでしょうね。