二度めにふたりきりで会ったときのことです。
部屋についてすぐ彼に抱き寄せられたとき
「お前、震えてるぞ。震えるの禁止!」と
言われました。
自分では気づきませんでした。
彼に抱かれるのは二度めなのに。
自分ではどうすることもできず
ただ彼を見ていたように思います。
あれは二度めか、三度目のことでしょうか。
わたしは彼にされるがままになっていました。
わたしは彼に翻弄されていました。
わたしは彼にすがりついて
ずるい、と言いました。
わたしばっかりこんなになってしまって
リュウさんだけ平気な顔をしていて
ずるい、と。
リュウさんは
俺だって必死だよ、ずるくないよ、と言うと
もう一度わたしを遠いところへ
連れていきました。
抱きあっている最中に
彼に言ったことがあります。
セックスしながらおしゃべりしていいの?と。
彼は、何か言いたいことがあるの?と
私に聞きました。
そうじゃなくて、
セックスしながらおしゃべりしていいって
知らなかったの。
彼の胸に顔を寄せて
そう言ったことを覚えています。
彼は、いいんだよ。そのほうが楽しいだろ、と
答えました。
彼の部屋に行ったとき
彼はいつも私にお酒を飲ませました。
彼も飲みました。
酔わないと
私に触れられなかったのかもしれません。
彼に、今までお付き合いしたひと全員の
顔と名前を覚えてる?と
聞いたことがあります。
彼は、覚えていない、と答えました。
彼はわたしの顔と名前を
今でも覚えているのでしょうか。
わたしは彼の腕にあったあざの形を
はっきりと思い出すことができません。