最初に彼の部屋に4人で集まったとき
誰かがお酒をこぼして
私のハンカチでそれを拭きました。
私はそのままそれを
彼の部屋に忘れてしまいました。
次の日に彼が電話で
そのことを教えてくれました。
そちらで使ってください、そう答えました。
水色のCOMME CA ISMの
タオルハンカチでした。
二度めか、三度目に
彼の部屋に行ったときのことです。
彼の部屋の洗面所に
わざと香水のアトマイザーを
置いたことがあります。
白い甘い花の香りでした。
私が帰ったあとに
彼に私のことを思い出してほしくて。
部屋を出る前に彼がアトマイザーに気づいて
忘れものだぞ、とそれを渡してくれました。
彼の部屋にもっとかけらを、
目に触れると胸の痛くなるようなかけらを
置いてくればよかったと思うことがあります。
私のことを忘れられなくなるようなかけらを。