最初にふたりきりで会ったときのことです。
彼に口でしたとき、不意に彼が言いました。
「お前、旦那をいつも口で処理してるのか」
どうして今そんなことを言うのか
わかりませんでした。
もしかしたらこのあと
夫と自分とどちらがいいのか聞かれるのかな、
そういうのって
不倫のテンプレなのかなと思いました。
私は口で最後までしたことが
ありませんでした。
「ううん、したことない」
彼は、前に私が
夫に抱かれるのが嫌だと言っていたことから
抱かれるのを避けるために
口で処理しているかと思った、と言いました。
上手だったから、と。
「わたし、じょうず?」
「ああ、上手。」
「商売、できる?」
彼は少し笑って、ばか、と
私の髪をくしゃりと撫ぜました。
二度目か、三度目に会ったときでしょうか。
彼は口でして欲しいと言いました。
口のなかに出したいと。
初めてのことでした。
彼の言うとおりにしました。
彼が私の口のなかに放ったとき
私はそれを飲み干していました。
反射的なものだったのでしょう。
私はびっくりしていました。
彼が苦かっただろう、飲んじゃったのか?と
聞いてきました。
私は言葉が出ず、頷いただけでした。
彼は口を濯いでこい、と言いました。
私は洗面所に行きながら
彼はこういうことに慣れているんだな、と
ぼんやりと思いました。
もしかしたら私は
口ですることに才能があるのかもしれないとも
そのとき、ふと思いました。
今のわたしの恋人は
わたしにそのようなことは決してしません。
わたしに才能があるのかどうかは
わからないままです。