12月のことでした。

私は子どもと行ったコンビニエンスストアで

くじを貰いました。

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そのコンビニエンスストアのくじで

私は音楽プレイヤーが当たりました。

 

ちょうど新型のプレイヤーが

売り出されていた時期でした。

私はその新型プレイヤーを

買ったばかりでした。

 

まだ子どもにあげるのも早すぎる。

リュウさんが自分の音楽プレイヤーが壊れたと

少し前にSNSで言っていたのを

私は思い出しました。

 

リュウさんはスマホで音楽を聴くのが

好きではありませんでした。

スマホはメールや通話や

リュウさんが疲れたときには

苦手なものが詰まっていました。

 

私は音楽プレイヤーが届き次第リュウさんに

それを渡すことにしました。

 

その話をすると

リュウさんは喜んでくれました。

同時に複雑な気持ちにもなったようでした。

リュウさんは自分が

ひどくくじ運が悪いのだと話しました。

小夜子は俺とは違ってそちら側の人間だからと

彼は言いました。

 

たかがコンビニエンスストアのくじですが

それは彼にとって

一つの象徴となる出来事だったようです。

安全な道を当然のものとして

常に手に入れている私。

その象徴の音楽プレイヤー。

 

音楽プレイヤーは

クリスマスの朝に届きました。

私はそれをすぐリュウさんの家に送りました。

リュウさんの好きそうなお菓子を添えて。

リュウさんはお酒飲みなのに

甘いお菓子も好きでした。

翌日彼からお礼のメールが届きました。

 

そのあと彼から着信がありました。

彼から電話があるのはとても珍しいことです。

しかも休日の昼間に。

 

私は夫に、買い忘れたものがあるから

コンビニに行ってくる、と言って車に乗り込み

近くの公園の駐車場から彼に電話をしました。

 

彼は街が暖かくざわめくこの時期は

結婚していた頃のことを思い出して

ひどくつらくなるのだと話してくれました。

人恋しくなって

誰かの声が聞きたくなるのだと。

 

「お前、買い物に行ってくるって言って

外に出たんだろ。

俺の奥さんもそうだったからわかる。」

 

そう言って彼は電話を切りました。

 

 

まだ周囲には

クリスマスの喧騒が残っていました。