リュウさんと抱きあったときのことです。
どうしてこんなに気持ちいいんだろう
そんな私の言葉にリュウさんは
お前が淫乱だからだよ。
そんな言葉をわたしに投げつけた。
彼と抱きあうのが気持ちいいのは
彼が好きだからだと思っていました。
でもリュウさんは
旦那以外の男として気持ちがいいのは
お前が淫乱な女だからだよ、と
そう繰り返した。
そうなのかもしれないと思いました。
私は淫乱なのかもしれない。
私は違う、と言うことはできませんでした。
夫以外の男性であれば誰とでも
リュウさんとするように
私は感じるのかもしれない。
リュウさんだから、ではなくて
夫以外だから、なのかもしれない。
リュウさんと出会って
私はそれまで知らなかった感情が、感覚が
自分のなかにあることを知りました。
貪欲な性も私のなかにあるのかもしれない。
結婚の枠外のセックスが
私は好きなだけなのかもしれない。
リュウさんへの狂おしい思いは
リュウさんが
結婚の枠外にいたからなのかもしれない。
リュウさんはそれを
知っていたのかもしれない。
リュウさんは
お前も結局は淫乱な女だと私に失望したのだ。
私は私の身体を確かめたかった。
だから、私はサリィと寝ました。
サリィは私より7歳下のSNS仲間でした。
サリィは既婚女性のアオイに
恋をしていましたが相手にされず
当時は別の女性とのトラブルも
抱えていました。
私とサリィは
比較的近くに住んでいることもあり
ごくたまに2人で会うこともありました。
穏やかなひとでした。
私は彼に友情を感じていました。
2月だったように思います。
私は自宅から離れた駅で
サリィと待ち合わせをしました。
サリィの話を聞いた後で
私はサリィに言いました。
わたしリュウさんと寝てるの。
サリィはひどく驚いていました。
あの夏のリュウさんの部屋での出来事の後でも
私の思いは一方通行だと思われていました。
それは、想定外です、と
ポツリとサリィは言いました。
駅前に並んでいるタクシーの隙間で
私とサリィはキスをしました。
なんの感情も湧かないキスでした。
でも、寝たら違うのかもしれない。
私とサリィはもう一度会う約束をしました。
帰り際にサリィに
地元のチョコレート屋さんのトリュフを
渡しました。
こんなちゃんとした義理チョコを貰ったのは
初めてです。
そうサリィは笑いました。
3月、私とサリィは寝ました。
つまらないセックスでした。
私の上で動く彼を感じながら
途中でやめるのってありなのかな、
そう思っていました。
でも、サリィと寝たことに後悔はありません。
夫以外の人とセックスしたのに
なにも感じなかった。
とても退屈だった。
好きな人と抱きあうから、よかったんだ。
それが確かめられたから。
なぜリュウさんは
あんなことを言ったのだろう。
ずっと考えていたことでした。
私を抱くのがこわいんだ。
私と恋愛をするのがこわいんだ。
家庭を壊す側になるのが恐ろしいんだ。
私が淫乱な女であれば
彼は私の家庭を壊す主犯ではなくなるからだ。
帰り際にサリィから
ホワイトデーのお返しを渡されました。
彼と別れた後
駅のホームのゴミ箱にその袋を捨てて
私は電車へ向かいました。