まだ私がリュウさんとは

ただのSNS仲間だった頃のことです。

私のSNSのアクセス数がある日

驚くような数字になっていました。

数日後にも。

なにが起きているのかわかりませんでした。

私は自分のSNSでそのことを話題にしました。

 

たまたまじゃない?

何かに取り上げられたんじゃないかな。

 

そう声をかける仲間のなかでリュウさんは

「軽い嫌がらせだから気にするな」

と言いました。

 

何のことかわかりませんでした。

自分のSNSのURLが

掲示板に載ったことを知ったのはその後です。

ほかにも気になることが続きました。

 

SNS仲間からも

同様の被害を訴える人が現れました。

もっとひどいことを書かれた仲間も

いたようでした。

私は不安になり、自分にまつわる単語で

エゴサーチをかけるようになりました。

 

 

 

彼と別れる少し前のことです。

私の個人情報が掲示板に載りました。

私はリュウさんにお願いして

掲示板に削除依頼を出してもらいました。

 

私の携帯番号とメールアドレスは

簡単には変えることができませんでした。

私の働いていた業界の

いわゆる大御所と呼ばれる方が

数年前、私の職場に視察に来たのをきっかけに

私はその方と連絡をとっていました。

その方からの問い合わせに答えることは

私のキャリアにとって大事なことでした。

その方と繋がる細い糸を断ち切ることは

私にはできませんでした。

「連絡先を変えました」と

気軽に連絡できるような方では

ありませんでした。

私が連絡先を変更できたのは

数年後、大御所と呼ばれる方が

この業界から引退した後です。

今でも当時の私のメールアドレスで

検索をかけると

数年前のある掲示板がヒットします。

 

 

私はひとから悪意を向けられることに

慣れていませんでした。

ようやく、表向きは笑顔を浮かべながら

裏では悪意と目的を持って

情報を拾い集める人がいることに

思い至りました。

私自身、リュウさんの挙動を

SNSで覗き見ているのだから。

 

私たちは無邪気な仲間では

もうとうに、なくなっていました。