まだ暑い季節でした。
私はもうすぐ36歳になろうとしていました。
彼の部屋に4人が集まった翌日
彼から電話がありました。
珍しいことでした。
私は夜になっても二日酔いがひどく
頭痛が残っていました。
あんなにお酒を飲んだのは
学生時代のコンパ以来だったように思います。
彼は前日のことを少し話してくれました。
私の覚えていないこともいくつかありました。
また遊びに来いよ、と軽く言う彼に私は
いいの?と聞きました。
いや、少し考えさせて。
彼の声のトーンが落ちるのがわかりました。
そう、わかった。私は答えました。
その後も彼とのやりとりは続きました。
彼はトモミと付き合っていることを
私に教えてくれました。
トモミはその夏
3日間を彼の部屋で過ごしていました。
トモミは北海道を出たい、
リュウさんと結婚したいと
話しているようでした。
トモミののぼせっぷりを
私は笑えませんでした。
次第にリュウさんは
トモミのことが重くなったようでした。
28歳のトモミと違って
40歳を過ぎて離婚も経験している彼は
結婚することの重みを知っていました。
トモミはリュウさんの心が離れていくのを
感じ取っていました。
私は彼女をメッセージで慰めていました。
その一方で私は
リュウさんとメールを交わしていました。
私とリュウさんは
ほとんど電話はしませんでした。
私が奥さんでお母さんだから。
家のなかで好きな人とするような電話は
できないからです。
奥さんに複数回不倫をされていたリュウさんは
そのことをよくわかっていました。
ある日珍しくリュウさんが
私に電話をかけてきました。
ひどく酔っていました。
私と電話するとき彼はいつも酔っていました。
そのことを彼に聞いた時
「素面で人妻に電話をかける勇気なんかない」
そう彼は言っていました。
彼は電話で言いました。うちに来ないか、と。
いいの、と問う私に
ああ、と彼は答えました。
まだ暑い9月のはじめに
私は彼の部屋の扉を開けました。
ログインしたんだ、そう思いました。