リュウさんに抱かれた翌日

私は夫を誘いました。

 

もともと夫とはレス気味でした。

お互いの病気もありましたし

リュウさんと知り合う前から

当時の私は育児と仕事の疲れで

夫の前で女である気力もなく

夫の誘いを受けることは苦痛でした。

 

2人目の子どもが生まれたとき

子どもの夜泣きがうるさくて眠れないからと

夫と私は寝室を分けていました。

 

夫から誘われると

つらさを押し殺して夫に抱かれていました。

終わった後、自分の寝室に戻ると

なにがつらいのかを考えたくなくて

ただ静かに泣いていました。

夫の誘いを拒否するようになったのは

リュウさんと別れた後だったように思います。

 

 

リュウさんに抱かれた翌日

私は夫を誘いました。

夫はなんの疑問も抱かず

いつもどおりに私を抱きました。

いつもどおりのセックスでした。

 

 

私は確かめたかった。

夫に抱かれて

やっぱりこの人がいい、と思うかもしれない。

夫に対して罪悪感を覚えるのかもしれない。

夫は私の異変に気づくのかもしれない。

 

もしかしたら

気づいて欲しかったのかもしれません。

 

彼の記憶を夫で上書きして

元の日常に戻りたかったのかもしれません。

 

 

 

当時読んだ小説で主人公の女性が

恋人以外の男性に抱かれたあと

恋人に抱かれるエピソードがありました。

恋人の男性が

「俺以外の男と寝た?いつもと形が違う」

と言うシーンがありました。

 

それを読んだ時は

形状記憶じゃあるまいし

これは男性のファンタジーだと思いましたが

いつもと女性の雰囲気が違うことを

男性側が感じとることはあるでしょうね、とも

思っていました。

 

リュウさんに抱かれた日

彼の部屋を出る少し前

リュウさんはもう一度私のなかに入りました。

彼は「俺の形、覚えた?」と

耳元で囁きました。

 

 

私の身体は

リュウさんの形を覚えていたのでしょうか。

少なくとも夫はまったく気づきませんでした。