その年、夫は3回目の
長い休職をしていました。
その前から仕事は休みがちでした。
今回は休職期間に入った途端
夫は家のことを
率先してするようになりました。
保育園と学童保育に通う子どもたちの送迎は
夫がしてくれるようになりました。
それまでは
「そんなのできる訳ないだろ」の一言で
切り捨てていたものでした。
私がフルタイムで働きながら
続けていたことでした。
私の心療内科通いは続いていました。
夫は、それまでの10年間
私に負荷をかけ続けたことを
負い目に感じていたのでしょう。
「愛想を尽かされるかもしれない」という
不安もあったのかもしれません。
私の年収はおそらくですが
彼のそれを遥かに越えていました。
私の機嫌を取るようなことを言ったり
「小夜子のことが好きなんだよ。
今更だと思われるかもしれないけど
君に恋しているんだよ。」などと
突然言うこともありました。
けれども
私が別の男性に思いを寄せていることに
夫はまったく気づきませんでした。
私は外側だけこの家にいればいいのだ。
私の心はここになくても誰も気づかないのだ。
そう思いました。
そうして夫は
私に時間をくれるようになりました。
私はその時間を使って
SNSにのめり込んでいました。
SNSで学生時代の友達とグループを作って
盛り上がっていると嘘をつきました。
学生時代の友達に会うと嘘をついて
初めてオフ会に行きました。
彼の家に行く時は
15年ぶりに遠方の友達に会うと
夫に嘘をつきました。
夫は気持ちよく私を送り出してくれました。
そうして夫がくれた時間を
私はSNSの仲間達と
そこで出会った彼に注ぎこんでいました。