SNS仲間で中心的存在だったリュウさんには

思いを寄せる女性が何人もいました。

北海道に住む28歳のトモミは

積極的にリュウさんに

アプローチしているように私には見えました。

トモミはリュウさんのお気に入りでした。

 

トモミは名古屋での最初のオフ会には

参加できませんでしたが

その夏、彼女は

岐阜に住む友達のところに遊びに行く、と

SNSで宣言しました。

しばらく会っていない友達のところに

遊びに行って3泊すると。

 

私たちは

トモミがリュウさんに会いに行くのだと

察しました。

 

トモミが岐阜に着いたという日

私達はいつもより静かに

SNSを眺めていました。

 

リュウさんとトモミは

まったく関連のない記事を

その日アップしていましたが

2人のログイン時間が

すれ違いになっているのを私は見ていました。

一台のパソコンを

2人で共有しているのでした。

そしてそれは3日間続きました。

 

 

私達が使っていたSNSでは

コメントの記入時間が表示されていました。

私はリュウさんがSNSに現れると

その時間をメモにとるようになっていました。

 

リュウさんが

彼のお気に入りのフォロワーのSNSに

コメントを残す時間をメモにとり

彼がどの順番でフォロワーを回っているのか

調べました。

いつもトモミのSNSが最初で

私のSNSに来るのが最後でした。

 

私はそうして

彼へのネットストーキングを始めました。

 

 

私はその年の冬、トモミと会っています。

北海道在住のトモミと姉さんが

SNS仲間に会いにこちらに来たのです。

トモミは長い髪に眼鏡をかけ

おとなしめの服装には不釣り合いな

アンクレットをしていました。

彼女の書く文章と同じように

飄々とした、掴みどころのないひとでした。

 

 

私はトモミのリュウさんへの恋を

応援していました。

夏に岐阜に来た彼女には

「男は追い詰めたらだめよ」と

メッセージを送りました。

 

 

その秋、私はトモミに

「わたしリュウさんと寝ているの」という

メッセージを何度も書きました。

送信ボタンは押しませんでした。

 

 

私はリュウさんと寝ていました。