私のことをまわりの人は
「まじめな人」と言うでしょう。
仕事はきちんとこなしているけれども
エレベーターで乗り合わせたら
話題に困る、少し堅苦しいまじめなひと。
私はまじめでおとなしい子どもでした。
返ってきたテストで
間違った答えに丸が付いていたら
先生に申告して
点数を下げてもらう子どもでした。
私の仕事はやや特殊な専門職です。
特殊といっても、各県に30人以上は
いるはずですが。
待遇がいいという訳ではありませんが
プライドをもって仕事をしています。
この仕事に就くために
大学時代は資格試験の勉強を続けていました。
今の職場に就職が決まったときは
とても嬉しかった。
夫は私が初めてきちんと
お付き合いをした男性でした。
私は夫しか男性を知りませんでした。
小説や漫画で知る性の世界は
架空の物語だからと
現実はこんなものか、と思っていました。
それしか知らないので
不満もありませんでした。
ずっとこのままなのだと思っていました。
不倫とか浮気とかそんなものは
この世のどこかにあるのかもしれないけれど
私には関係のないことだと思っていました。
もう恋をすることなんて思いもつかなかった。
誰かに好意を寄せられることなんて
もう絶対にないと思っていた。
恋をして結婚をして子どもを産んで。
もう、女としての機能は使い切ってしまったと
もう「現役」はとうに過ぎたのだと
信じていました。
彼に触れられるまでは。
