これはバークシャー・ハサウェイ副会長であるチャーリー・マンガーの講演の内容や考えをまとめた本だ。
550ページもあるこの本を手に取るとずっしりとくる。表紙がマンガーの顔をドット柄で示してあり近くで見ると実に可愛らしく面白くみえる。私は普段、本を最初から最後まで読まないがこの本は最初から最後まで(後ろにあるとても小さい文字で書かれている参照を除いて)1文字も読み残さずに読破した。
この本を読めばわかるがマンガーが超弩級の天才だとわかる。何を言っているのかわからないところが多々あった。残念ながらこの本を読んだところで銘柄選びの採用基準が書いてあるとか、投資の成績が上がると思ったら大間違いである(それは実は私なのだが、、、)。
この本を通してマンガーは様々な学問からエッセンスを抜き出しそれを投資に応用していることが理解できる。私大文系の私にとって数学を勉強してこなかったことを激しく後悔させる内容だ。そしてマンガーが特に力を入れて話しているのが心理学に関して。本のうちかなりの部分を心理学が占めている。
この心理学がいうバイアス(歪み)をどう取り除くかを読めただけでもかなり実りの多い読書となるはずだ。例えば自分がすでに保有している銘柄は売りにくくなるバイアス、自分がこうだと思う情報ばかりを集め逆の反対意見には目を向けない確証バイアス、損失のほうが利益よりも辛く感じてしまう損失回避の傾向、一度決めたものに固執し、それが正しいか否かに関わらず方向転換できない一貫性とコミットメントの傾向、などに関して詳細に解説している。
それを回避するためには実に簡単な方法を提唱しているのだが、それをここで書いても読者の方が実行しない可能性が高いのでここでは記さずに実際にこの本を読んでそれは何かを見つけて実行して欲しい。それを実行すれば投資において自分が犯してしまう恐れがあるバイアスを排除することだ可能となる。これは投資だけではなく仕事や日常生活にも応用できると思う。
読後の感想としては一般の個人投資家が長期投資において個別銘柄の選択などは不可能なのではないかと思ってしまった。という意味でマンガーは賛同していないが、やはりインデックス投資やETFへの長期投資は正しい選択肢だと言える。もちろんポートフォリオにおいて個別銘柄を組み込むのは間違ってはいないが上限のパーセンテージを設定し、それを超えないようにするべきだろう。
恐らくもうこのレベルを超えるチャーリー・マンガーの本は出版されないと思う。そう思うと寂しい限りだ。バークシャー・ハサウェイやウォーレン・バフェットに関して興味がある方は是非買ってじっくりと読んで欲しい。投資に対していくつかの実用的な方針が得られると思う。そしてこの本を読破した方は表紙を見てこう思うに違いない。可愛かったはずの顔が恐ろしく見えてしまうということに。
さらばチャーリー・マンガー。人間の心理に打ち勝つべく、私も座して待ち続ける。
