「朝早い農家の人たち」

 

 

 

町中に宿屋を探したのですが、見つかりません。

自転車を走らせて探します。しかし、見つかりません。

 

 

その間2時間。宿屋がありません。

 

 

とあるガソリンスタンドにたどり着きました。

広い駐車場でトイレ水道完備。売店もあり・・・ここかな。

泊まる場所を決めました。日が落ちるのを待ちます。 

 

約1時間半。あたりが暗くなってきました。

しかしそこの管理人さんらしき人はいたんです。

 

ふつうは5時を回れば帰宅するんです。

遅くとも6時はあるかな。

 

でも帰る仕草はないんです。そして、

6時半でもダメなんです。

 

言葉がわかれば断るんですが私にはわかりません。

その場所の決まりもわかりません。

 

トラブルを避けるためにその場所をあきらめました。

 

 

自転車に乗り北上します。

しかしテントが張れるような場所は、

犬が多く吠えています。

吠えられるのが嫌でまた北上します。

ふと左手に風力発電のプロペラが回っています。

(夕日にそのシルエットが映し出されてとても美しいんです。)

地元の方がカメラでそれを撮っています。

 

 

美しい風景は一瞬です。

こちらは寝床をさがすのでゆとりはありません。

 

そこから国道を1時間くらい走り続けました。

(もうどこでもいいや!)

 

畑に続く道がわきにあります。この道を行ってみよう。

家々はみんなしまっています。

 

何か新美南吉の「手袋を買いに」の子ぎつねが、

お母さんに言われた手とは違い、

反対の手を出してしまう情景が出てきました。

 

 

人間の家の幸福が家の明かりから伝わってくる。

そんな感じで、道の行き止まりが水路で、

そこにテントを張りました。

 

夕闇が真っ暗になりました。たべるものはもっていません。

水はたくさんあります。

 

風がテントの網の窓からかすかに入ってきます。

 

暑いのでそれが大事です。

 

体を冷やすことが大事です。

 

 

星が見えます。寝ながら60近く数えました。

寝返りを打ちながら、うとうとしていました。

200mくらい離れた国道の灯りが黄色に光っています。

 

時々大型車の振動が伝わってきます。

朝方4時くらい、テントの近くに農家の方がご夫婦で、

玉ねぎの収穫にトラクターでやってきました。

 

あたりはまだ真っ暗です。

驚かすつもりはなかったのですが、

仕事に合わせて私はテントをたたみ始めました。

言葉は発しません。

 

顔は見えません。

(暗くてわからない。)

 

 

 

テントを全部片付け終わる頃、こちらの様子がわかったようで

奥さんが「にこっ」と微笑んでくれました。

私は「ニイハオ。」とあいさつをして別れました。

 

農家の方はこれから市場に行って売るんでしょう。

4時に来たということは、家をもっと前に出ているんでしょう。

(台湾の農家の人は働きもんだな。)