「着いた、降りた、出発だ!」
「ベルファースト」に着いた。雲息が怪しい。
今にも振り出しそうだ。フェリィーを降ります。
(リバプールから一夜あけての時間)
自転車をコンテナから自分から引っ張り出す。
おおきなトランクが4つある下に自転車は置か
れています。(仕方ないな。特別だよ。)
自転車を取出し、組み立てます。
「あー。あー。あー。たいへんだ。」
「ない。ない。ない。」
「自転車にひもでくくりつけていた六角レンチがない。」
「あー。あー。あー。たいへんだ。」
これがないと、ハンドルを固定できないのです。
どこにも見つけられない。
途方にくれます。
「神様、助けて!」
アイルランドを回れない。
(どうしよう、どうしようもない。)
出発をあきらめ、日本に帰えらなくてはいけない。
さよならアイルランド。
しかし、帰り方を知らない。
どこに行っていいのかもわからない。
「最悪。」
フェリィーで来たお客はどんどん迎えの車で出かけます。
ここは「ベルファースト」
伊妻の迎えは誰もいません。
そして誰もいなくなりました。
フェリィー会社の敷地内です。
係員が門を閉めるので敷地内を出るように促します。
(予備の工具は全然持っていません。)
(どうしよう、どうしようもない)
その時、係員に話したんです。
「私は7㎜の六角レンチを無くしてしまって
困っています。」
「私は7㎜の六角レンチは持っていません。」
「それなら、通りを右に200m行ったお店にありますよ。」
「えっつ、えっつ、えっつ。」
係員のその言葉は、私にとって、天のお言葉。
神のお言葉
(うれしい。)熱くお礼を言って、敷地を出ます。
荷物を自転車に乗せ空気を入れて、出発です。
門を出るとコンテナを積んだ大型の車が行きかいます。
ここはベルファースト。輸出入の基地になっています。
市原の臨海工業地域を思い出させます。200mくらい言ったところに、スーパーがありました。
他にお店はありません。自転車を停めて中に入ります。
トラックドライバーが朝食を求めて次から次に入ってきます。
(スーパーとコンビニの中間的な感じのお店です。)
運転手が朝食を買いに来ています。
お店の人に話して六角レンチを貸してくれるように話します。
するとお店の店員さんは笑顔で六角レンチの束をさがして渡してくれました。
しかしサイズがみんな大きいのです。
(こりゃだめだ。)
お店の人に大きすぎる事を伝えます。
すると忙しい中探してくれます。
そして小さな束を渡してくれました。
私のほしいのは7㎜のレンチです。
ありました。
ありました。
夢がつながります。
(うれしい、うれしい。)
ハンドルをしっかり締めます。固定されこれで安全に自転車に乗れます。
お礼を言って出発です。
(ありがたや。ありがたや。)
神様ありがとう。
(捨てる神あれば拾う神あり。)