その日、早めの夕食を済ませ主人は自分の部屋へ。
私はキッチンで洗い物。
洗っている最中にLINEが入った。
自分の部屋にいる主人から
主人の趣味の作品を撮った写真だった
急いでLINEで
『すごーい!!
なんか神秘的!!
洗いものが終わったらパソコンで見せてね。』
やっぱり、もう元カノとLINEのやり取りはしていないと思った。
だって少し離れただけなのに
私にLINEしてくるぐらいだものね。
そして、洗い物を済ませて主人の部屋へ向かった。
「やっぱり綺麗だね〜。
パソコンの画面で見ると余計に綺麗に見えるよね。」
「そうだろう。
これ、この前のコンテストのときに飾ってもらったんだよ。」
「そうなんだ。
よくできているものね。
ところで新しいスマホのケースとリュック、ネットで頼みたいんだけど…。
実はどっちの色にするか?
迷っているんだよね。」
「じゃあ、早速見てみようよ。」
「ねぇ、どっちの色のほうがいいかなー?」
「俺は両方とも水色がいいな。
ピンクのスマホのケースだと今持っているのと一緒だし。
リュックはグレーよりも水色のほうが雰囲気がいいよな。
それに両方とも水色なら統一感があっていいと思うよ。」
私はどっちの色でも良かった。
最初から主人の決めた色を買おうと思っていた。
私は【ポジティブな妻】になると言いながら、既に自分の意見・生活を捨てて主人の意見・生活にすべて合わせていた。
主人が喜ぶこと。
主人が喜ぶ言葉。
主人の興味のある話。
主人の好みの話し方。
だから
私という色を捨てた。
そして
主人色に染めていった。
元カノから主人を取り返せれば、私という色なんて何色になってもよかった。
私は主人の前では本当の私を3カ月前に捨てていることにとうに気づいていた。
ポジティブな妻ではなく
【主人に都合のいい偽りの妻】を演じた。
結局は私も主人と同じように可哀想な人になっていた。
主人にだけでなく、私自身が私に嘘をつきながら生活してきた3カ月間だったのに…
偶然にしても久しぶりにまた主人と元カノのLINEを見ることになるなんて…。
そう言えば
ひとつでもタイミングがずれていれば
主人と元カノだけの世界に出会うことはなかった。
今回も同じ。
偶然の重なり。
それとも?
偶然ではなく必然か?
悪事は必ずバレるという。
数分後
私は主人と元カノの楽しい2人だけの世界に足を踏み入れることになる。