・アニメ『真剣で私に恋しなさい!!』(2011年度作品)に、麻生太郎元総理そっくりの「元総理」という役名のキャラクターが登場する。
この元総理が第8話で、公園の鳩にえさを与えている場面がある。
はじめは数羽だけがえさをついばんでいるだけなのだが、やがて、大量の鳩が飛んできて、元総理の全身に取りつく。普通ではない絵面なので、ちょっとびっくりする。
言っておくが、元総理は、全身にえさをかぶっているわけではない。
全身に鳩が取りつく、という状況は、常識上、どう考えても成り立たない。
理屈の上で成り立つはずもない、おかしな状況が生じているのであれば、作り手が何らかの意味を込めて、このシーンを作り出している、と解した方がよい。そこで、俺なりに考えてみたら、答えが出た。
麻生元総理の次の首相が誰だったか、思い返してほしい。そう、民主党の鳩山由紀夫だ。
2009年は麻生自民党が鳩山民主党に食われて大敗している。つまり、元総理が全身鳩まみれになる、という妙な演出は、そのことを暗示したかったのであろう。
なお、俺はこのシーンをはじめてみたとき、別の点においても不可解に思えた。川神百代(かわかみももよ)と九鬼揚羽(くきあげは)が茶室で話をしているシークエンスにおいて、元総理が鳩まみれになるこの映像が、唐突に挿入されるからだ。しかし、彼女たちが交わしている会話に耳を傾けているとその中身は、国と兵器産業の癒着に対する批判であったり、海外の平和維持活動に従事する兵隊に、満足な武器を与えていないことへの憤りであったりする。この対話の内容を踏まえて、先ほど述べた、鳩まみれのシーンを考えると納得がいく。
要は、麻生自民党が選挙に負けたことだけではなく、政治家全体の駄目さ加減をも風刺したかったのだ、アニメの作り手たちは!
鳩に見立てられた鳩山由紀夫が、麻生元総理に食いついていくさまは、国民そっちのけで党利党略の政争に明け暮れる政治家たちを表している。