鳩メモ(『ヨコハマ買い出し紀行』) | キジバトのさえずり(鳩に執着する男の語り)

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・芦奈野ひとし『ヨコハマ買い出し紀行』(全14巻)にキジバトが出てくる。漫画作品にカワラバトが登場することはよくあるが、キジバトは珍しい。
 ちなみに、俺は、鳩の中で一番、キジバトが好きだ。


*第3話「しましまのごろごろ」(第1巻)

 朝、目を覚ました初瀬野アルファ。
 彼女が洗面所で顔を洗ったり、口をゆすいだりしていると、キジバトの鳴き声が聞こえてくる。

どーどー
ぼっぽぽー

どーどー
ぼっぽぽー

でーでっ
ぽぽぽー

でーで
ぼっぽぽー

でー・・

 キジバトの美声を聞いているうちに、ポンと手を打って何かを思いつくアルファ。
 屋根裏部屋の観音開きの窓を開け放って、さながら鳩時計の鳩のようなまねをしてみたくなったのだ。
 さっそく、アルファは、屋根裏部屋に上がって窓を開けようとする。しかし、長く使われていなかったせいか、固くて全く開かない。
 バンバンと手でたたいても開かない。
 業を煮やしたアルファが蹴りを入れると、窓が開く。しかし、蹴り破ってしまったから、さあ、困った。
 トンカチを手に、不機嫌な様子で、窓の修理に当たるアルファであった。


*第44話「星の目 人の目」(第6巻)

 カフェ・アルファの近くで、ガソリンスタンドを営んでいるおじさんがいる。
 何かの用があって、このおじさんのところに来ているアルファだったが、アルファがやっている喫茶店並にお客さんがやってこない。
「――――
うちもお客さん
来ないけど……」
 アルファがほうけたような表情でそう言うと、おじさんは、
「うちも
まけてねえ
な」
 と、答える。
「……
おじさん
ガソリンって
さあ……」
「くさるよ」
 ゆっくりとした時間の中で、二人はとりとめのない会話を交わす。

っぼーー
ぼっぼーー

でーーーー・・・

でーー

 キジバトの鳴き声が辺りに響く。
 そのうち、アルファもおじさんもいすに腰掛けながら、居眠りしてしまう。
「あ!
寝に寄ったん
じゃないんだ」
 やがて、はっと目を覚ましたアルファがそう言う。
「あ~~~
わりいな
こっちのペースに
つきあわしちゃって
よ」
「いや――
ペースは似たような
もんなんですけど
ね」
 アルファが大きく伸びをする。
「……
こりゃー
ガソリンも
くさっちゃうねー」
 アルファがしみじみと言うと、
「あーー
くさるくさる」
 と、おじさんもしみじみと言う。


*「アールアンドピー」(第12巻)

 アルファと丸子がスクーター(8馬力級電動)で競争するお話。
 丸子の乗るスクーターが「はと丸」という名前。