台風襲来の予兆 富士山の笠雲台風18号 | 富士火山研究所

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富士火山研究所は、富士山南麓にある小さな研究所です。
富士火山の地質、富士山を取り巻く環境、富士山の歴史的な変遷、文化について研究しています。

「つれづれの記」
 身の回りにはよく見ないと、見落としていることがたくさんあります。
 忙しさにかまけていると、なかなか気付かないことが、
 ちょっと気を抜いてぼーっと見てみると、意外なことが見えてくることがあります。
 そんなつまらないかもしれないけど、ちょっとすごいかな?を
 「つれづれの記」で書いてます。

●台風来襲の予兆 富士山の笠雲
 
富士市富士山ビューカメラより(2014年10月3日9:00)

 富士山周辺で暮らす人は、昔から富士山にかかる、雲で天気を予測してきました。

 とくに、「笠雲がかかると雨が降る」ということは、小さな子供でも知っていることで、この地域では、ほとんど常識のようなものですが、実際にあたるのです。

 上の写真は2014年10月3日午前9時の富士山の画像です。
富士山頂から八合目付近(約標高3800~3200m付近)にへばりつくようにして、三角錐の形をした雲が見えます。

 この、三角錐の形をした雲のことを、「笠雲」と言います、「傘雲」ではなく「笠雲」です、つまり「こうもり傘、洋傘」の形ではなく、日本古来の「菅笠」と、呼ばれる、頭に被る「笠」の形からこう呼ばれます。
 まさに富士山が被る雲の「笠」なのです。
 
 
  富士山にかかる笠雲はいろいろな形、パターンがあるのですが、その多くは、富士山の山体とは、少し離れて出来ることが多く、上の写真のように、山体に密着して笠雲が発生することは、あまり多くありません。
 
 私の経験上、このように富士山に薄く密着した笠雲が発生したときには、数日後に、暴風雨を伴った猛烈な嵐となります。

 今まで、数回、このような笠雲を見ましたが、ほとんど100パーセントに近い割合で暴風雨になりました、その多くが台風によるものだと記憶しています。

 とくに、今回のような、ごく薄くきれいな、菅笠のような形の雲がかかると富士山の至近距離あるいは富士山そのものを台風が通過するのです。
(つまり静岡県沿岸部に上陸して、通過する台風)

2014年10月3日の8時過ぎから9時ごろにかけてに、私は、この笠雲を自宅から見たとき、間違いなく大きな台風が富士山に向かって来るんだな、と確信に近い予測をしました、

 実際この時点で太平洋上で台風が発達していました、
 
2014年10月3日の気象衛星からの台風18号の画像
(この時に富士山の笠雲が発生している)

 山にかかる、雲の状況などを見て天気を予想することを「観天望気」と言いますが、富士山の笠雲による天気の予想は、この典型的なものです。

 私自身、子供のころ、私の父から、富士山にかかる雲を見ながら、「この雲がかかると明日は雨、この雲は風が吹く」、などと教わりました。

 この父の、予想は、ほとんどあたっていていました。

 また、私自身も、毎日、富士山を見続けて、ウン十年になり、父以上に富士山の雲を見て、天気を予想でできるようになったのではないかなと、思っています。 
 はたして、私の今回の予測はどうなるのでしょうか?
 
富士市富士山ビューカメラより(2014年10月3日5:00~19:00ごろ)

      
 富士山の笠雲の変化
 
 
 現在、2014年10月5日23時06分ですが、台風は確実に近づいています,今後どのような状況になるのか見守りたいと思います。
何事もなく無事に過ぎることを願いつつ。
”おやすみなさい・・・・・”
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一夜あけました。

結果このようでした。
  
 2014年10月6日10時ごろ(台風18号通過直後)
 
  
  ほぼ同じ位置から写した過去の写真


  
周囲約1km四方が冠水し湖のようになってしまいました。

 富士五湖からの景色でも田貫湖からの景色でもありません、富士南麓のただの田園です。

 結局今回の台風18号は、2014年10月6日8時ごろ、静岡県浜松市に上陸して、まっすぐに、富士山に向かって進み富士山上空を通過していきまました。

    
 2014年10月6日10時の気象衛星からの台風18号の画像とレーザー画像
まさに、この時点で、台風が富士山頂地点を通過している。

 富士山南麓、特に富士市では、時間雨量50mmを超える雨量を記録し、前日からの雨と合わさり、2014年10月6日8時~10時にかけて多くの場所で冠水しました。
 潤井川(富士山大沢崩れを源流として田子の浦港に注ぐ富士市中央部を流れる1級河川)周辺の田園地帯は、湖のようになり、周辺道路は冠水のため車両の通行が不可能な状態になりました(上の写真)
 
  長年この地に住んでいますが、私の記憶には、ここまでの冠水は記憶にありません。
 
結果として、富士山の笠雲による予測は、ピタリと的中しました。

台風18号は2014年10月6日9時過ぎに富士山頂地点を通過して行きました。

このように、富士山の笠雲による、天気の予測の当たる確率は非常に高いのです。

3776メートルという日本最高峰の気象状況が、このような予測を可能にしています。
(笠雲と気象予測、またその科学的根拠については、また、あらためてお話ししようと思います)

 また、過去富士山麓に住む人々が毎日のように見続けて、富士山と富士山にかかる雲、そして、その状況と、天気をはじめとする、自然現象を結び付けて、生活に必要な情報を得てきた継承が、いまだに続いていて、その継承を、私自身が、父から受け継いできたことのすごさを、この台風襲来によって再認識しました。

 この台風18号による、被害は、東海道本線由比のがけ崩れ、静岡市清水区などの多くの浸水被害はありましたが、静岡県内の犠牲者はなく、被害は最小限に抑えられたのではないかと思います。

 静岡県では、地震、火山噴火をはじめ自然災害に対して、古代から敏感に接してきて、その危機意識が継承され、自然災害は多いのですが、犠牲者が少ない傾向があります。

 自然災害から身を守るため、自然が事前に発する警告を感じ取る、感性を持つことが、重要なのでは?
と改めて感じた、今回の台風通過の顛末でした。

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 また、台風19号が近づいています
 笠雲が、また、かかるのか?観察したいのですが、
残念ながら、10月8日、9日と富士山が見えませんでした。

タイミングとすると、明日あたり、ちょうど、笠雲がかかるタイミングですが、、、、。

明日 (もう今日か?!) 10月10日は降水確率10%なのでチャンスかもしれません。

早起きして、頑張って観察しようと、おもっています。
(すでに現在1:08起きられるかな?)
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