短編小説 真夏のトライアングル
作:NaNa
★57
律と初めて会った日を想った。あのとき律は、頭上の星空に両親を見ていたのだろうか。
律の部屋には、棚付きの天然木の上質な学習机、その上に置かれた鉛筆立て、鉛筆削り、地球儀。ベッドには、青と緑のチェック柄の布団カバー、色褪せた電車の模様の枕が置かれている。まるで少年の部屋だった。
「死んでる、なんて、無理に言い聞かせることはない」律は言った。
ベッドで眠りについた少年に、チェック柄の布団をそっとかぶせる母親、地球儀を回して少年と一緒にのぞき込む父親、ピアノを奏でる息子を誇らしげに見つめる両親、そんな姿が見える気がした。