短編小説 真夏のトライアングル
作:NaNa
★4
盗み見ると、彼は真夜中の空を吸い取ったような色の髪をさらさらと風に揺らし、いつもそうするように、屋根と屋根の間にのぞく遠い空を、漂流船から陸を探し求めるような目で見つめている。
つんと尖った鼻先から、小さいけれど肉感的な唇へと続く曲線に見とれながら、誰もが寝静まるこんな時間に、どうしてこうも出くわすのだろうかと不思議に思った。
運命の出会いというのは大げさで気恥ずかしいけど、間違いなく彼は私にとって特別な人になっている。彼がベランダに現れると、優しい風が通り過ぎて私の怯えを舞い散らしてくれるからだ。
私はサッシにもたれて上空を見つめた。隣人と私はそうして無言のまま朝日をむかえた。