映画「素晴らしき世界」感想 | NaNa's secret world

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今日も小説執筆中

 

最近お母さんが役所広司を推していて、

その影響で、どんな俳優さんなのか興味を持って、観ました。

 

犯罪歴10犯の、

かっとなりやすい暴力的な元ヤクザ、三上。

12年の服役生活を終えて出所した後、

こんどこそはカタギの生活を、と心新たにするのだが…

 


狂暴で短絡的で、一般市民に馴染めない三上。

 

だけどその一生懸命さに、観ている側はいつの間にか、

彼が放っておけない存在になってくる。

 

「がんばれ、だめ、そこで一般市民を殴っちゃダメ」

って画面に向かって言いそうになった。

暴力沙汰をおこしてしまわないか

観ていてハラハラドキドキしてしまう。

 

 

世の中と折り合いがつかず苦しみながらも、

なんとか普通の社会に馴染もうとあがく。

 

そんな三上に、時おりかすかな希望の光が降り注ぐような瞬間がある。

 

近所のスーパーの店長、

ケースワーカーの職員、

やくざの兄貴の妻。

 

出会う人々がときおり、三上を少しだけ救い上げて、

頭上の青空を指さしてくれるような瞬間だ。

 

特にやくざの兄貴分の妻が、

三上を娑婆の世界に押し戻そうとするときの言葉が忘れられない。

 

娑婆は我慢の連続ですよ。我慢のわりにたいして面白うもなか。そやけど、空が広い言いますよ

 

って叫ぶんです。

 

 

 

娑婆の世界に居場所を見つけられず、

自分の体の奥底に潜む凶暴さを圧し殺せない。

 

それでも三上はその言葉に背中を押されるように走るんです。

 

 

 

また、三上が働き始めた介護施設では、

障害のあるスタッフがリンチ紛いの暴力をうけているのを目撃する。

 

三上は暴力で阻止しようとするが、

周囲の人からそれをとがめられているので、

苦しみながら背を向けてこらえる。

 

そのあと、その障害のある男性スタッフが、

彼に降りかかっている苦しみに、

自身で打ち勝つ姿を目の当たりにする。

 

彼から差し出された、コスモスの切り花。

そこには、”我慢の連続”に負けていない

彼の強さと優しさが込められていた。

 

 

 

三上はコスモスを受け取り、

さらに新しい一歩を踏み出す。

 

そのとき、彼の上に広がっている空は…

 

 

 

映画の内容は素晴らしかった。

 

人間が出会って変化していく様に心が洗われる瞬間がいくつもあった。

 

同時に、出所者の社会復帰の難しさというテーマがきちんと描かれていて、考えさせられるし、いままで自分の価値観でしか見えていなかった物事に、新たな視点から光を当ててくれる。

 

さらに、どの俳優陣の演技もすばらしく、のめりこませ、共感を呼ぶ。

 

見ごたえのある一本でした。

 

余談ですが、もしハリウッドでリメイクするなら、

トムハンクスにやってもらいたい。

 

    

監督
西川美和
脚本
西川美和
原作
佐木隆三
 

出演者
役所広司

仲野太賀

六角精児

北村有起哉

白竜

キムラ緑子

長澤まさみ

安田成美

梶芽衣子

橋爪功