なんだろね?
このところ『安倍』がキテる。
最初は『安倍と物部』で次は『安倍と宗像』──
で、先日いきなり遭遇したのがこの記事だった。
2007年4月14日。
当時首相だった安倍晋三氏は、
会津若松での選挙応援演説でこう言った。
「先輩がご迷惑をおかけしたことを、お詫びしなければいけない」
安倍さんの生まれは東京都新宿区だが、
その本籍は山口県大津郡油谷町(現在の長門市)にあった。
山口県。
つまり長州である。
長州と会津──この重く複雑な因縁。
1868年。
会津の地で壮絶な戦争があった。
明治天皇を戴く薩長土肥が、旧幕府勢力を駆逐した戊辰戦争の一局面。
白虎隊の悲劇に代表される会津戦争は1カ月後、会津の降伏で終わった。
官軍の戦後処理は苛酷を極めた。
新政府軍は会津側の戦死者を『賊徒』として埋葬を許さず放置したという。
さらに死体に恥辱を与えて弄んだとも。
半年後、防疫上の理由でようやく埋葬を許されたがその扱いは粗雑を極めた。
明治になってからも会津は『朝敵』として長州から侮蔑され差別されたのである。
会津人にとってこの時の屈辱は『忘れてはならないもの』となった。
安倍さんは本籍が山口県ということもあって、
会津人に根付く感情に配慮して冒頭の言葉が出たのだろう。
安倍さんの血脈は『奥州安倍氏』であり、先祖には安倍宗任がいる。
だが本籍は、会津人にとっての宿敵長州という複雑なものである。
会津の地に立つ長州絡みの総理。
それでも安倍さんの口から出た『お詫びの言葉』には表向きではないものがあった。
『古事記』にこんな話がある。
崇神天皇は孝元天皇の長子である大彦命を北陸方面へ、
その子の建沼河別(たけぬなかわわけ)を東海方面へ派遣し、
行く先々の国を平定させた。
親子はそれぞれの地方を従えながら前進し、やがて東北の地で出会った。
その地を『会津』という。
安倍氏はかつて『阿部』の字を使い、大彦命が先祖である。
その大彦命だが『出雲口伝』によると、
出雲王族の分家である『磯城家』の当主でヤマト国の統治者であると。
なるほど。
磯城家か──
そこらへんが安倍さんの最期の地とも重なるのだろうな。
話が逸れたが、
先祖大彦命の立った『会津』の地に安倍さんは『長州人』として立っていた。
民俗学者の谷川健一氏は言う。
阿倍氏は畿内に先住していた長髄彦一族と物部一族が混血した氏族である、と。
先日ブログにも書いたが『安部と物部』の関係は深い。
安倍さんの先祖の大彦命の生母の兄は穂積臣の祖であり、穂積は物部と同族である。
つくづく安倍晋三という人は不思議だ。
安倍宗任や大彦命や穂積(物部氏)の血を継ぎ、
奥州日高見国や会津とも濃い血縁を持ちながら、皮肉なことに本籍は長州──
さらに奥州安倍氏は奥六郡を支配下に置きながら、
自身の出自を『畿内の日高見』ヒノモトと長髄彦に求めていたふしがある。
安倍さんの最期の地が『大和西大寺』──
まさに畿内日高見のヒノモトの中心地なのも『血の因縁』と思えてならない。
以下、
安倍家の裏話──
安倍家は明確でないが奥州安倍氏の流れを汲むとされており、
前九年の役にて源頼義、源義家率いる軍勢に厨川柵(岩手県盛岡市)で破れ、
九州に配流された安倍宗任の末裔を称している。
安倍家の元家政婦は東北地方で安倍一族の関係地を丹念に回りながら、
各地に古くから伝わる家系図を調べ歩いた。
その結果、山口県大津郡油谷町に住み着いた一族が安倍宗任の流れをくむ者たちであること、青森県五所川原の石搭山・荒覇吐神社に始祖である安倍宗任が眠っているらしいことを調べ上げた。
しかしこれは後日、覆される。
この石搭山荒覇吐神社は偽書『東日流外三郡誌』に基づいて、
『東日流外三郡誌』の発見者である和田喜八郎が昭和55年(1980年)に創建した神社であり、神社所蔵の安倍頼時の遺骨と称する物は後に鑑定の結果、
鯨の骨の化石であることが判明した。
しかしこの時点で安倍晋三氏の父・晋太郎は真実を知らない。
1987年7月末、家政婦からの報告を聞いた晋太郎は
出馬表明した総裁選の全国遊説の折、妻洋子と晋三夫妻を伴い、
青森県の石搭山・荒覇吐神社に出向き、先祖供養を果たした。
なお案内役を兼ねて晋太郎たちに同行したのが画家の岡本太郎であり、
岡本太郎もまた安倍一族の流れをくむ一人として、
自らのルーツに関心を持って調べたことがあったという。
まぁ、先祖供養と称して出向いた青森県の石搭山荒覇吐神社は偽物だったが、
安倍元首相銃撃事件が起きる少し前、安倍さんは奥様と共に福岡県宗像市大島にある
安昌院(あんしょういん)を訪れ、先祖の『安倍宗任の墓』に手を合わせている。
父の晋太郎と参った青森の石搭山・荒覇吐神社には先祖は眠っていなかったが、
最後の最後で『安倍宗任の眠る宗像の地』に呼ばれたのかも知れない。
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